ZEROCO株式会社 楠本社長
PLANET

冷凍庫でも冷蔵庫でもない第三の鮮度保持技術「ZEROCO(ゼロコ)」事業が始動 生産者の負担を削減しフードロスを減らす

第三の鮮度保持技術「ZEROCO(ゼロコ)」の発表会が行われました。鮮度を保ったまま長期保存可能だという画期的な鮮度保持技術。発表会の様子をSDGs fanは取材してきましたのでご覧ください。

日本の食産業の発展を支える基盤づくりを行うために設立されたは、温度約0度かつ湿度100%弱の保管環境を実現することで、食材や食品の鮮度を長期間、高品質に保つことを世界で初めて可能にしました。長期間保存することにより商品寿命が延びることで、結果、フードロス削減にも貢献します。そんな「ZEROCO」の発表会が行われましたのでその模様をご覧ください。



近年では、食の分野に最新のテクノロジーを取り入れた「フードテック」への関心が高まり、廃棄ロスを防ぐ管理技術や植物由来の代替肉など、新たな食の可能性やそれを支える技術に対してますます注目されるようになりました。

 

フードテックが注目される理由の1つとして、地球規模での人口爆発が挙げられます。2021年時点で約79億人とされていた人口は2050年に97億人に増加するとされ(※)、これからの30年間は世界人口の大幅増加に伴う食糧問題、地球環境の悪化などの課題に直面すると言われています。一方で日本に目を向けると、高度な技術や優れたサプライチェーン、恵まれた自然環境と気候のなかで発展してきた世界に誇る食文化があるにも関わらず、人口が減少するとともに、食の未来を支える担い手が減少していくことが予想されます。

 

※ 同社調べ



発表会冒頭ではZEROCO株式会社の楠本社長より挨拶があり、「今日発表させて頂くことを嬉しく思います。私が22年前にカフェ・カンパニーを創業した際は道の目の前に遊歩道がございますが、当時は東急東横線の高架下でございました。この高架下にカフェとバーとお弁当屋を開き、それが私の食ビジネスの始まりでした。この創業の地で私は新しい食のイノベーションが起きるのではないかとずっと思い続けていまして、パナソニックさんと一緒にこの100BANCHという、未来の100年を作る新しいプロジェクト100個を未来に解き放とうじゃないかと、コワーキングスペースを開きました。それから5、6年経ちましたが、おそらくもう200プロジェクト以上が解き放たれております。そして言い出しっぺの私本人が「ZEROCO」の発表を行わせていただきます。」と今回の発表会にあたり、創業時のことや今回の発表会場でもある100BANCHについて語りました。



挨拶を終えると同じく楠本社長より事業戦略についてのプレゼンテーションが行われました。プレゼンテーションではそれぞれ「ZEROCO」のミッション、ビジョンが語られました。

 

ミッション
ミッションとして「未来の“食”を、ZEROからつくる。」が掲げられその内容としては1.素材開発 2.流通革命(DX、オートメーション、鮮度など)、3.新しいブランド創造(D2Cや新しいFC)が挙げられました。

 

ビジョン
ビジョンは「世界中のおいしさと健康に貢献する」が挙げられ、向こう30年で人口が爆発する地球環境で、人類と食料資源との関係を新しい時代にフィットした社会システムに発展させるため、健康的で、サステナブルな「おいしい未来の創造」に貢献するとともに、少子高齢化を迎える日本の食産業の発展を支える基盤づくりを目指しますとしています。



「ZEROCO」は、温度が約0度、湿度 100%弱を安定的に保つことを可能にした、世界初(※)の鮮度保持技術です。SDGs fan編集部は担当者に「これは冷蔵庫なのか、それとも冷凍庫になるのですか?」と尋ねたところ「どちらでもない全く新しい第三の鮮度保持技術です」とのことです。生鮮食品など食材に含まれる水分をコントロールし、安定した状態にすることにより、高いクオリティーを保ったままで長期保存を可能にします。

 

一般的な凍結技術では表面から先に凍っていくため、食材の表面と中心の温度で差が生じることで冷凍に時間がかかってしまいます。結果、冷凍していく過程で大きな氷結晶が発生し、食品が持つ細胞が破壊されてしまいます。

 

その点、「ZEROCO」は、食材の表面から中心の温度までを0度で均一にキープします。そうすることで食品中に含まれる水分が水と氷の区別がなくなる状態(固液臨界状態)となり、氷結晶の発生が抑制されることで凍結スピードが非常に速くなり、細胞破壊が起こりにくい状態を作ります。結果、食品の持つ細胞を崩さずに鮮度の高い状態で長期間保存が可能となります。

 

※2023年3月 同社調べ

保存例として以下の通りです。

保存例

果物

イチゴ

3ヶ月

2ヶ月

メロン

3ヶ月

鮮魚

のどぐろ

2週間

うに

3週間

生花

バラ

4ヶ月

※市場購⼊での⽬安例。収穫時期、品種、個体によっても品質保持期間は異なります。



「ZEROCO」に保管することで食品の細胞が破壊されずドリップが起こらない状態となるため、サプライチェーンの上流に導入することで鮮魚の神経締めや、はらわた除去といった初期加工業務から解放され、鮮度が良いままでの保存を可能にします。さらに、加工の手間が減り商品寿命が延びることで、結果、フードロス削減にも貢献します。

楠本社長曰く「長期保存が出来るので廃棄しなくて済む。また季節外れの出荷も可能で夏にイチゴを出荷したりすることも可能で様々な可能性が期待できる」と語りました。



これまでは冷凍が不可能だと言われていた食品の品質を保ったまま冷凍保存が可能となります。解凍時も特別な手間を必要とせず、電子レンジや自然解凍のみでおいしさを保ったままお召し上がりいただけます。

SDGs fan編集部は「冷凍が難しいまたは不向きな食材はありますか?」と尋ねたところ「卵は一般的に冷凍に不向きだと言われていますが、今日試食にお出しした海苔巻きには卵が使われていて問題なく長期間の鮮度保持ができています。



今回の発表会では「ZEROCO」で鮮度保持された食材の試食会が行われました。出てきた食品はアボカド、イチゴ、メロン、ローストビーフ、海苔巻き、寿司、おはぎ、ショートケーキ、煮麺、パスタです。アボカド、イチゴは62日間保存されたもので、メロンは95日保存された物でしたが、全く違和感無く食べることができました。そして驚いたのがローストビーフです。本当に0度で保存されていたのかと思うくらいしっかり味が付いており、またショートケーキも生クリームがバラバラになることもなく柔らかいままでした。

 

このほか食材以外にバラの花を鮮度保持した際は4ヶ月保つことが可能とのことです。

 

この「ZEROCO」の登場により日本の食がガラっと変わりそうです。特に食品ロス大国と言われている日本ですが、無駄な廃棄食材が「ZEROCO」により減少すればと思います。

【会社概要】
・会社名:ZEROCO株式会社
・代表者:代表取締役社⻑ 楠本修⼆郎
・所在地:東京都渋⾕区神宮前5-27-8 Los Gatos 3F
・始動:2023年3⽉
・URL:https://www.zeroco.inc
・事業内容:
・鮮度保持機器(ZEROCO)の製造、販売、コンサルティング事業
・農産物、畜産物、⽔産物の加⼯及び⾷品製造販売に関するコンサルティング事業
・冷蔵・冷凍⾷品の販売、製造、輸出⼊事業



SDGs目標12「つくる責任つかう責任」とありますが、そもそも具体的にはどういったことなのでしょうか?

国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する
12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる。
12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフ スタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境 への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。