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廃プラスチックの再資源化で本年3月彩の国埼玉環境大賞受賞「プラスチックの回収と再資源化で海を守りたい」

コンタクトの製造販売を手掛ける株式会社シードは、プラスチック製品を大量に使用している企業として持続可能な社会を目指し、環境に配慮した2つの取り組みを行っています。

昨今の社会的課題となっている廃プラスチック問題。特に海に浮遊している海洋プラスチックが広く注目を集めています。そんな中、シードでは「プラスチックの回収と再資源化で海を守りたい」という想いから2つの事業を行っています。

① BLUE SEED PROJECT

株式会社シードは1957年の創業以来、「眼」の総合専門メーカーとして多様な商品展開や事業を行い、あらゆる人々の「見える」をサポートし続けています。主力製品であるコンタクトレンズは、レンズそのものをはじめケースやシュリンク パッケージを包んでいる透明フィルム など、その素材のほとんどがプラスチック製です。シードでは2019年から、ブリスターと呼ばれるコンタクトレンズの空ケースを他社の物を含めユーザーから回収する活動“BLUE SEED PROJECT”を行っています。

②コンタクトレンズ製造工程の廃材リサイクル

リサイクル処理業の「株式会社ダイトク」と協議を重ね、シード専用にプラスチック高度リサイクルシステム「ドックス」を開発。
プラスチックを再資源化し、有価物として販売するフローを構築しています。この取り組みは、2022年3月に環境保全活動で優れた取り組みを行う企業や団体に贈られる「彩の国埼玉環境大賞」を事業者部門で受賞しました。


シードでは工場内で排出されるプラスチックだけでなく、消費者の元で発生する廃棄物にも着目しました。消費者の手元に渡った空ケースについては、それぞれの地方自治体の方針で処理されていました。高品質プラスチックだからこそ、その価値を生かしたリサイクルを効果的に行うことがさらなる環境保全につながると考え、回収からリサイクルを行う “BLUE SEED PROJECT“を開始いたしました。

“良い循環”サーキュラーエコノミーを実現


回収した空ケースはリサイクル業者に販売され、需要が高まっている物流パレットに生まれ変わります。この物流パレットは、破損しても何度でもリサイクル可能で、無駄の生まれない資源の循環利用、サーキュラーエコノミ―を実現しました。


美しい海を守るために、海の保全団体へ寄付


また空ケースの売却で生じた収益は海の保全団体、“一般社団法人JEAN” へ全額寄付されています。自社工場で発生するプラスチック廃棄物だけでなくコンタクトレンズの空ケースを回収することで消費者側の環境意識向上にもつながっています。

誰でも気軽にリサイクルできる仕組みづくり


消費者が普段使用している1dayや2 weekなどの、使い捨てコンタクトレンズの空ケースを他社メーカーも含めて全て回収しています。回収拠点はこの活動に賛同いただいている取引先の眼科施設や、コンタクトレンズ販売店などで、1カ月で約150キロ


2022年8月31日まで累計約3,550キロを回収しています。


企業や学校も回収拠点として協力してくださっており、現在全国各地で広がりを見せています。
https://www.seed.co.jp/blueseed/
(協賛企業・回収拠点はこちら※随時更新中!)


2021年4月から、産業廃棄物として処理していたアルミやコンタクトレンズが付着したプラスチックを選別するシステム「ドッグス」をリサイクル業者と共同運用しています。2022年3月期で約800tの削減につながると想定。導入により、産業廃棄物の大幅な削減に繋げ、廃棄費用の削減とともにシードの循環型事業経営の発展を目指していきます。

導入前はほぼ100%廃棄


コンタクトレンズは今や視力矯正器具としてなくてはならないものですが、その製造に使われている主な材料はプラスチックです。製造工場で排出される産業廃棄物は年間700t~800tに上りその大半を占めるのがポリプロピレン製のコンタクトレンズ成形用プラスチック型です。そこに左の画像のように、アルミ箔や細やかなコンタクトレンズ片などが混ざった状態で排出されます。
pp (ポリプロピレン)も一定の割合はリターン材として再利用しておりますが、pp 製のプラスチック型はコンタクトレンズを固める工程で一度熱を加えると再利用できなくなってしまうためほぼ100%廃棄しておりました。環境負荷の少ないプラスチック廃棄物の処理方法を模索していたところ、以前からプラスチック廃棄物のリサイクル処理を委託していたリサイクル処理業者、ダイトクからある提案を受けました。

廃プラスチックを再資源化するシステム「ドックス」の開発


きっかけとなったのは2017年に中国が廃プラスチックの輸入を禁止したこと。それまで国内の廃プラスチックの相当量が中国へ輸出されていましたが、禁止になると国内に廃プラスチックが溢れることが予想されました。また昨今の海洋ごみをはじめプラスチックごみが地球環境に多く悪影響を与えている深刻な社会問題になっていることから、自分たちにできることは何かを考えたところ、完全にリサイクルするにはのそれぞれの素材を限りなく100%に分けることが大事だと考えて、シードとダイトクで協力し、問題解決に向けて一緒に取り組むことをきっかけに、研究開発を進めることになりました。そこでシードとダイトクが協力し独自開発したのがシード専用にプラスチック高度リサイクルシステム「ドックス」です。


遠心力を利用した湿式比重選別と光学式選別の2つのシステムが採用されていて、コンタクトレンズの製造過程で排出されたプラスチック混合物からポリプロピレン、アルミ、コンタクトレンズ片を選別・分離します。


混合物から分離されたポリプロビレンは文具や自動車部品などの各種プラスチック製品へ、アルミは再びアルミとしてモノからモノへ、リサイクルされます。そして分別後に残ったコンタクトレンズ片は産業廃棄物として固形燃料などに生まれ変わります。

企業努力「数種類の廃棄物100%分ける」難しさ


ダイトクの担当者は次のように語っています。


「数種類の混合廃棄物をそれぞれの素材に完全に分けることで、より質の高い資源の有効利用となります。数種類の廃棄物を100%完全に分けるというのはなかなか難しく、当初は大変苦労しました。一つの設備では完全に分けきれずそれぞれの特色を持った設備を合わせることと、また選別効果を良くする薬品などにも注目をしました。そんな試行錯誤の中、できあがったのがこの設備です。実際に稼働してみるとさまざまな課題や問題もありましたが改善を繰り返すことで、限りなくそれぞれの素材に分けることが可能となりました。」


2017年からはシステム開発に取り組み、2019年にドッグスを導入。そして2021年4月から本格稼働となりました。
これにより毎回のプラスチック廃棄物の100%リサイクルが可能になっています!
CO2の排出量削減は現在算定中ですが、大きな削減効果を見込んでいます。処理費として年間何千万という費用がかかっていましたが、このシステムが稼働することによって、有価物として売却できるようになったので、経費削減にもなっています。

株式会社 SEED 広報・SDGs 推進室 及川 智仁佳 主任
株式会社 SEED 広報・SDGs 推進室 及川 智仁佳 主任

今後“BLUE SEED PROJECT”について


“BLUE SEED PROJECT”について企業として「BLUE SEED PROJECT」が始まってから、徐々に回収するブリスターの数が増えています。これまでに集まったブリスターの量は3,550kg(約3.5t)です。想像しづらいと思うのですが、1つのブリスターは1グラム程度なので、回収量を見るとたくさんの方々にご協力いただいていると感じています。しかし、実際に流通しているコンタクトレンズの量は年間で10tトラック600台分と言われているので、この数値を見ているとまだまだこの活動を盛り上げて全国にさらに広めていく必要があると考えています。
またコロナ禍で一時的に休止していますが、シード鴻巣研究所に隣接する複合型保育施設「ふくろうの森」のイベント開催や理科実験教室、地域や学生と連携しながら、空ケースの回収活動を行う等、環境問題に関する啓発活動を継続的に行っていきます。

SDGs目標12「つくる責任つかう責任」とありますが、そもそも具体的にはどういったことなのでしょうか?

国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する
12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる。
12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフ スタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境 への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。