【#1 SDGs fanレポート】美味しいコーヒーが飲めなくなるかも?「コーヒー2050年問題」を根本から解決するプラットフォームに注目!
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【#1 SDGs fanレポート】美味しいコーヒーが飲めなくなるかも?「コーヒー2050年問題」を根本から解決するプラットフォームに注目!

SDGs fan編集部が体験したSDGs事例をレポートしていきます。第一弾として、気候変動などによりコーヒー生産のサステナビリティが危ぶまれている「コーヒー2050年問題」を根本から解決するプラットフォーム「TYPICA(ティピカ)」のスペシャルティコーヒー試飲会に参加。創業者、生産者、ロースターのみなさんのトークセッションをお届けします。

私たちの生活を豊かにしてくれるコーヒーは、1日約20億杯消費されており、石油に次ぐ国際商品と言われています。

美味しいコーヒーは安らぎや幸せを与えてくれますよね。

そんなコーヒーが飲めなくなってしまうかもしれない「コーヒー2050年問題」というものをご存じでしょうか?
実はコーヒーはとてもデリケートな作物で、栽培することが難しく、生産にかかる費用よりも売値のほうが安くなってしまうこともあり、生産農家の担い手不足が深刻化しているそうです。
【コーヒー2050年問題とは?】

今、世界では気候変動によりアラビカ種をはじめとするコーヒー栽培適地が半減する“コーヒー2050年問題”への警鐘が鳴らされています。私たちが普段飲んでいるコーヒーは、ブラジルやベトナムなどで機械を用い大量生産されたものが多いです。それに対し、手摘みを中心に生産されるクオリティの高いコーヒー=スペシャルティコーヒーが、ケニアやボリビアなどで生産されていますが“コーヒー生産を続けていけない”という危機に瀕しています。大量生産されるコーヒー生豆が増えるほど、小規模農園で生産されるコーヒー生豆の価値が下がってしまうのです。

この問題を根本から解決する、コーヒーのサステナビリティを高めるプラットフォームを展開している「TYPICA(ティピカ)」。コーヒー生豆のダイレクトトレードを麻袋1袋から可能にしたオンラインプラットフォームであり、2021年4月に先行ローンチした日本では、すでに1000件以上のロースター(自家焙煎コーヒー事業者)が登録しています。そして10月1日より、オランダ、イギリス、フランス、韓国など、計59か国でサービス提供を開始しました。
今回、TYPICAのスペシャルティコーヒー試飲会に、SDGs fan編集部・澤田が参加!

TYPICA創業者の後藤 将さん、山田 彩音さん、コーヒー生産者のピーター・ムチリさん〔ロックバーンコーヒー(ケニア)〕、コーヒー精製所を経営するフアン・ボヤン・グアラチさん〔ナイラ・カタ(ボリビア)〕、ロースターの石井 康雄さん〔Leaves Coffee Roasters(東京)〕、鈴木 洋介さん〔ホシカワカフェ(埼玉)〕のトークセッションをお届けします。

ーーなぜTYPICAを立ち上げたのでしょうか?
後藤さん「今、世界では気候変動によりアラビカ種をはじめとするコーヒー栽培適地が半減する“コーヒー2050年問題”への警鐘が鳴らされています。私たちが普段飲んでいるコーヒーは、ブラジルやベトナムなどで機械を用い大量生産されたものが多いです。それに対し、手摘みを中心に生産されるクオリティの高いコーヒー=スペシャルティコーヒーが、ケニアやボリビアなどで生産されていますが“コーヒー生産を続けていけない”という危機に瀕しています。大量生産されるコーヒー生豆が増えるほど、小規模農園で生産されるコーヒー生豆の価値が下がってしまうのです」

手摘みのコーヒー生豆の生産は非常に手間がかかるため、現地ではリスクが高い作物であるという認識が強いそうです。

後藤さん「おじいさんの代から続けている歴史あるコーヒー農園でも“生産にかかる費用よりも売値のほうが安い”という事態が往々にしてあります。私たちの生活を豊かにするコーヒーが、生産者を苦しめているという構図を改善したい、そんな想いのもとTYPICAを立ち上げました」

これまで小規模の農園では、収穫後、自分たちで農園から近くの村まで豆を運び、コンテナ単位(18t)で販売していたそうです。そうして流通されるコーヒー生豆は、生産者の名前は記載されず、また、価格に透明性がないため実際の評価よりもずっと安価で流通していたそうです。そんなコーヒー生豆を生産者本人の名前で世界中に販売することができる構図を作り出したのがTYPICAです。

さらに、小規模生産者の作る高品質なコーヒーは、日陰でゆっくり完熟したチェリーのみを収穫し精製されるため、コーヒーの木の間にシェイドツリーという大きな木を植えて育てるアグロフォレストリーという農法が主流だそうです。コーヒー生産における品質向上を実現するためにはシェイドツリーが不可欠で、小規模生産者が増えれば、コーヒー生産地に森が増えていくという好循環が生まれます。
ピーターさん「今、ケニアでは、若者がコーヒー生産から離れています。TYPICAのサービスを利用することで、生産したコーヒー生豆に対し適切な価格で販売でき、賃金を正規に払えるようになりました。結果、若者のコーヒー生産離れをおさえることに繋がっています。コーヒー生豆の価格の透明性が保たれることで、生産者のモチベーションを高めます。モチベーションこそが、高品質なコーヒーを作ることに繋がっています」
フアンさん「TYPICAの後藤さんがボリビアに直接来ることで生産者のモチベーションがアップし、信頼関係ができあがりました。自分たちが作ったコーヒーが、ヨーロッパやアジアに届くことを実感でき、生産を続けるという意思が生まれました」
石井さん「マイクロロースターでも、ネームバリュー関係なくロースター同士が平等に高品質なコーヒーを購入できるようになりました。また、未開拓な農園が発見できることも魅力です」

TYPICAではサプライチェーン(生産地からロースターに届くまで、関わっている人々、報酬、手数料など)を全て開示した“トランスペアレンシーインフォメーション”を発行しているそうです。これにより、生産者に正規な対価が支払われるという仕組みになっています。

TYPICAで売買されるコーヒー生豆は、国際相場の3~30倍(!)で取引されているとか。

そして、後藤さんは年間を通し海外を飛び回っており、生産地を直接訪ねているそうです。その熱意が生産者の皆さんの心を動かし、イノベーションを起こしているのですね!
鈴木さん「これまでは、生産農家の顔が見えず、リスト化された農園から選ぶだけでした。TYPICAの仕組みにより農家の顔が見えたことにより、繋がりと想いが生まれました」

――TYPICAに今後期待することはありますか?

鈴木さん「生産農家から届いた豆を生産者に送り返してみたいです。あなた方が作ってくれたコーヒーはこんな形になったとシェアしたい!」

驚くことに、生産農家の方は自分が作ったコーヒーを飲んだことがない人が多いそうです。“コーヒー= cash crop(お金のための作物である)”という認識だとか。そんな生産者のマインドを変えることができたら、また違った秘術革新が生まれそうでワクワクしますね!



【スペシャルティコーヒー試飲会】
ピータ―さんの農園で作られた豆をはじめ、3種のスペシャルティコーヒーを試飲しました。普段コンビニコーヒーばかりを愛飲している私でも、3種が全く違うことが分かります!それぞれに香りや酸味に個性があり、これまでの生産ストーリーを思い浮かべながらいただく一杯は格別でした。
後藤さん「品種、土壌、標高などの生産環境はもちろん大切ですが、そこに生産者がいなければコーヒーを作ることができません。生産者の情熱が美味しいコーヒーを作ります」

世界中の生産農家とロースターの心が交流できるプラットフォーム「TYPICA」。生産者が自分の名前で世界と取引ができることで、トレーサビリティ(情報の透明性)を高め、業界の健全な発展に寄与しています。

コーヒー生産には、生産者とその家族を含め1億人に人々が携わっているとされています。

そんなコーヒー生産のサステナビリティを高めることで、生産者の生活を形成し、また、私たちは美味しいコーヒーを享受することができるのです。