脱炭素化・エネルギートランジッションの流れの中でのコスモエネルギーグループの「DX活用」とは?
【SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」】エネルギーの安全・安定供給を使命とし「Oil&New」をスローガンに改革しているコスモエネルギーグループ。同グループのビジネス改革におけるデジタル技術とデータの利活用についてご紹介いたします。
目次
■ DXの歴史的経緯とコスモエネルギーグループのDX活用 >>
■ DXを活用した再生可能エネルギー供給と脱炭素化への取り組み >>
■ サービスステーションでのDX >>
■ DXに向けた社内体制の整備 >>
■ SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とは? >>
カーボンニュートラルが世界的に注目されている昨今、日本では政府より2020年にカーボンニュートラル宣言が発表され、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロ」にすることが呼びかけられました。
石油事業は戦後、日本の成長を支えるインフラ産業として、エネルギー源である石油の安全・ 安定供給を使命としてきました。1996年の特定石油製品輸入暫定措置法の廃止等を経て、自由競争下で合理化による競争力の強化や業界再編が進みましたが、石油の精製販売を軸とする事業構造は揺るぎないものでした。しかし昨今、脱炭素化の必要性に後押しされたエネルギートランジッションの流れの中で、石油中心のビジネスからの変革が求められています。これにより、石油元売り各社では、石油燃料から再生可能エネルギー事業やLNG(液化天然ガス)事業へのシフトを行う等、ビジネス改革の動きが加速しています。
エネルギーの安全・安定供給を使命とするコスモエネルギーグループでは、「Oil&New」のスローガンを掲げ改革を進めていますが、そのうえでDX活用は重要であり、企業の内部からDX推進を強化することで、次世代ビジネスモデル構築の後押しを行っています。
今回は、コスモエネルギーグループが進めているビジネス改革における、
<DXの歴史的経緯>
● 2004年:スウェーデンで初めて提唱
DXとは「デジタル技術(IT)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」であると、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授らにより初めて提唱されました。
● 2010年代:より経営や事業に踏み込んだ解釈に
2010年以降、ガートナー社やIDC社、IMD教授であるマイケル・ウェイドら、「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」を提唱。より経営や事業に踏み込んだ解釈として、DXとは「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」であると定義しました。
● 2018年~:経済産業省が定義を公表
「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」解釈を踏襲し、定義を公表するとともに、老朽化・複雑化した既存システムが、DXを推進する際の障壁となっていることに対して警鐘を鳴らし、2025年の完了を目指して計画的にDXを進めるよう促しました。
これにより、現在では様々な業界・企業でDX推進が行われています。
<コスモエネルギーグループのビジネス改革とDX活用>
コスモエネルギーグループは、2018年からの第6次連結中期経営計画で「Oil&New」をスローガンに掲げており、既に事業として確立している「風力発電事業」を中心とした再生可能エネルギー事業を強化し、エネルギーとモビリティの両面で再エネサプライチェーン構築と利用促進を加速、またEVを軸とした新たなモビリティサービスの創出にも注力しています。これらの改革をスピード感を持って進めるにあたり、ビックデータやデジタルソリューションの活用を積極的に行っています。
● 各事業・サービスでの取り組み
石油事業では「製油所の視える化」、サービスステーションでの「デジタルステーションシステム(DSS)」の導入を行い、省力化を実現。また、法人自治体向けに「再エネ×EV」の脱炭素ソリューションをワンストップで提供する「コスモ・ゼロカボソリューション」では、エネルギーマネジメントの領域でDX活用を行うことで、電気代の価格上昇抑制や充放電の最適化を可能としています。
コスモエネルギーグループ全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)化を強力に推進、実現していくことを掲げ、2021年11月にはコスモエネルギーホールディングスに「コーポレートDX戦略部」を新たに設置、デジタルが浸透した組織文化の醸成と実現に向け、取り組みを進めています。
コスモエネルギーグループは、「Oil&New」の達成に向け、企業の内部から DX 推進を強化。経営資源の投下をDXによって最適化することで、新エネルギーの開発・供給を後押しする企業の仕組みづくりを進めています。
2004年から注力している風力発電事業は、国の規制も厳しく、メンテナンスや運営に多くの人員が必要不可欠です。そのような課題を解決するために、経営資源の多くを投下していた石油事業を効率化する、「製油所の視える化」を行いました。こうした取り組みの結果、製油所の省人化 に成功。これにより、風力発電事業へ経営資源を投下でき、さらなる発展につながっています。
現在では、コスモエネルギーグループの強みを活かした脱炭素を実現するサービス「コスモ・ゼロカボソリューション」においてもDX活用を行っています。
<デジタルステーションシステム(DSS)>
コスモエネルギーグループでは、デジタルステーションシステム(DSS)を導入し、①店頭業務の省力化、②顧客接点の創出、③お客様の利便性の向上を行っています。DSSとは、国交省や自社所有のデータなどを活用することで、店頭活動の在り方を変え生産性を向上させていくシステムです。コスモの強みを活かしたシステムの連携により、円滑なお客様とのコミュニケーションやステーションの人員不足を解消することを目的としています。
<コスモ版顧客基盤データベースで連携>
以前は、POSシステムや顧客管理DB(CMS)などデータベースが部分的に連携されていましたが、DSSを導入することで、全体を連動させることが可能になりました。さらに、来店客の車検証データを受動取得し、AIがデータ分析に基づきスタッフへの接客アドバイスを行います。
導入前は、店長がスタッフスキルと車両状況を常時判断し店頭を見ながら指示を行っていましたが、DSS導入によりAIが通知をしてくれるため、お客様の利便性向上と従業員の働き方改革につながっています。
導入ステーションからの効果の声
・購入見込みの高いお客様が明確化されるため、人員を効率よく活用でき、逃さず声をかけることができるようになった。
・お客様からの問い合わせ件数が増えたことにより、折り込み・ポスティングを廃止でき、告知費用の削減につながった。
・DSSがやるべきことを明確化してくれるため、店長不在の際も普段と変わらない業務水準を保つことが可能になった。
様々な取り組みを実現しているコスモエネルギーグループですが、同一のビジネスモデルを長期に渡って行ってきた石油業界は、新しい取り組みへの柔軟性は他業界に比べると低い傾向にあります。そのため、社内体制の整備は必要不可欠です。そこで、チェンジマネジメントを始めとした社員全員の意識改革から取り組みを行います。
国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。
目標 7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
7.1 2030 年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 7.a 2030 年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。 7.b 2030 年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。