子どもの貧困率に大きな改善見られず――当事者の暮らしはどうなっているのか? 支援現場が示す実態 ひとり親家庭で「1日1食」も
厚生労働省「国民生活基礎調査」の結果に寄せて、支援現場から伝える貧困の実像
厚生労働省が公表した最新の「国民生活基礎調査」によると、子どもの相対的貧困率は11.0%(前回11.5%)となり、依然として大きな改善は見られませんでした。
では、実際の暮らしにはどのような状況が生じているのでしょうか。
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(本部:東京都大田区、代表理事:小泉 智)の支援現場では、もともと厳しい状況にあった困窮家庭の生活がさらにひっ迫し、食事を削るなど日々の暮らしの基盤に影響が及ぶ実態が見られます。
本記事では、多くの家庭が厳しい状況に置かれ続けている実情について、当事者への調査結果や生の声をもとに具体的に示します。
厚生労働省が公表した「2025年国民生活基礎調査」によると、子どもの貧困率およびひとり親世帯の貧困率において、前回調査結果[1]と比較し大きな改善は見られませんでした。
・子どもの貧困率:11.0%/約9人に1人(前回調査時 11.5%)
・ひとり親世帯[2]の貧困率:44.7%/約2世帯に1世帯(同 44.5%)
ひとり親世帯の貧困率は44.7%と依然として高い水準にあり、大人が二人以上いる世帯の貧困率(今回調査 6.7%)と比べると、その数値は約6.7倍にのぼります。
グッドネーバーズ・ジャパンでは、貧困状態にある家庭の切迫した現状に日々直面しており、もともと余力の少ない家庭ほど、その影響を強く受けている状況も見られます。
今回の「国民生活基礎調査」においても、生活が「苦しい」と感じる割合は全世帯で51.3%から55.4%へ上昇した一方、母子世帯では75.2%から82.1%へと増加しており、その増加幅は全世帯を上回っています。
こうした結果から、困窮は単に広がっているだけでなく、特に厳しい状況にある層において、その深刻さが増している可能性が懸念されます。
[1]厚生労働省が3年ごとに実施する大規模調査に基づき、2022年に公表した「国民生活基礎調査」の貧困率に関する結果を指す。
[2]子どもがいる現役世帯のうち大人が一人の世帯員
当団体は2026年2月~3月、フードバンク「グッドごはん」の食品支援を利用するひとり親家庭を対象に、暮らしの状況に関するアンケート調査[3]を実施しました。
その結果、就労している回答者において、昨年(2025年)に職場で賃上げがなかったと回答した人が最も多く、6割近くにのぼりました。
物価高が続く中で収入が増えない状況では、実質的に生活の厳しさが増していることが懸念されます。
こうした影響は、生活の基盤である”食”にも及んでいます。
当団体の同調査では、学校給食のない休日、経済的理由などにより子どもの食事回数が減少する傾向が確認されました。
さらに、保護者が自身の食事を制限するケースも多くみられます。同調査において、保護者が1日1食で過ごす例も確認され、“犠牲”を伴うやりくりが常態化している状況がうかがえます。
当団体のもとには、食品支援を利用するひとり親家庭から、生活の厳しさを示す声が継続的に寄せられています。
・「養育費も無く生活しています。今年小学生の娘がいますが、1人にはできないため、正社員時短で働いています。 送り迎え等の関係で仕事をセーブしなければいけないため、収入も少なくなっております。」
・「食料が購入出来ないことが多々ある」
・「頼り先がない為、健康を崩して生活が成り立たなくなることが心配」
・「複数の病気を抱えており、医療費だけでも大きな出費のため、子供の進学などでまとまったお金をどうやって工面しようか常に考えています。」
(いずれも、直近3か月以内にフードバンク「グッドごはん」の利用申し込みフォームを通じてひとり親家庭から届いたコメント)
こうした声から、収入不足や働き方の制約、セーフティーネットの不足など複数の要因により、不安定な生活に置かれやすい実態がうかがえます。このような状況は、個々の家庭の事情にとどまらず、社会の構造に起因する課題であるといえます。
当団体は2017年より、フードバンク「グッドごはん」を通じて、低所得のひとり親家庭への食品支援を実施しています。支援を利用する世帯は増加傾向にあり、これまで何とか生活を維持してきた層が、新たに支援を必要とするケースも見られます。
現場では、「生活がひっ迫し、支援に頼らざるを得なくなった」「以前は買えていた食材が買えなくなった」といった声も聞かれ、生活の余力が失われている状況が見えてきています。
今回の結果が示す貧困率の状況は、現場で見られていた厳しい実態が、統計としても表れたものと考えます。
生活の基盤に直結する「食」をはじめ、日々の暮らしに影響が及ぶ中で、見えにくい困難は深刻な課題となっています。
こうした実態に目を向け、困難な状況にある家庭を支える取り組みを一層強化していくことが求められています。
グッドネーバーズ・ジャパンでは、低所得のひとり親家庭への食品支援を通じて、子どもたちの生きる基盤である「食」を支える取り組みを一層促進してまいります。直近では、学校給食がなくなる夏休みに期間に食品配付を強化する対応や、より多くのひとり親家庭へ支援を届けるための配付拠点の拡大など、必要な対策を講じてまいります。
外務省 SDGsサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。
目標 1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
1.1 2030年までに、現在 1 日 1.25 ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。 1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、 すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。 1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。 1.4 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。 1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。 1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。