【#1 SDGs fanインタビュー】住宅会社広報の西口彩乃さん 木のストローを開発した経緯を語る
【目標15「陸の豊かさも守ろう」】SDGs fan編集部がSDGs事例をインタビュー!第一弾として、木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームのSDGs推進室室長、西口彩乃さんが開発した木のストローについてお話を伺いました。
目次
■ 木のストローを開発しようと思ったきっかけを教えてください。 >>
■ きっかけはプラスチックストロー廃止と間伐材問題 >>
■ 現在エコストローとして、竹ストロー、繰り返し使えるステンレスストロー、ガラス製ストローなどが出てきていますが、木を選んだ理由、先ほどちょっと答えが出てしまいましたが教えてください。 >>
■ 世界初とのことですが、そもそも木のストローは開発が難しいのでしょうか。開発エピソードなどをお聞かせ頂けたらと思います。 >>
■ プラスチックストローを廃止し紙ストローを導入する店が多くなってきていますが、紙ストローに比べてどのような利点がありますでしょうか。 >>
■ 「社内から猛反対、相手にされない」と書かれていますが、それでも開発を続けたモチベーションは? >>
■ 紙ストローが出てきた際は「味が変わる」や「口にひっつく」などの意見が出てきましたが、そういった意見は参考にされましたか。 >>
■ プラスチックストロー廃止が進んでいますが、木のストローをデファクトスタンダードに置き換えるような施策などはありますでしょうか。 >>
■ 木のストローに対する思いなどを語って頂けたらと思います。 >>
■ 書籍化、ドラマ化まで >>
■ SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」とは? >>
木造注文住宅を手がけるアキュラホームグループが世界初の木のストロー開発に成功しました。その木のストロー開発者の株式会社アキュラホームSDGs推進室室長(広報)である西口彩乃さんにお話を訊くことができました。
何故木のストローを開発しようとしたのか、開発について、社内の猛反対など、エピソードを語ってくれましたので是非ご覧下さい。
きっかけは2018年の西日本豪雨が起きた時でした。私はもともと広報をしておりまして、住宅会社なので国土交通省が管轄です。国土交通省の記者クラブに情報交換するために行っておりました。そこの環境ジャーナリストの方が、西日本豪雨の取材で「西日本豪雨は天災ではありながらも、人が森林管理を適切に行っていなかったことによる人災でもあるのではないか」という話を聞いたそうです。
要は間伐されてなくて森が放置されていたということだったのですが、そういったことをどうにかできないかと記者の方から相談を受けたのが開発のきっかけでした。
それに、間伐材は間引く木なので、細く弱くて節だらけで住宅なんかでも使ったりは絶対しない。そういった使い道がない木をどうにかできないか、間伐という作業が進んで森の管理が適切にされる状態になるにはどうしたらいいかとも考えました。
同時期(2018年夏)に世界的に問題になっていたのがプラスチックごみ問題だったのですが、その中で代表格とされていたのがストローでした。
ホテルや飲食店がこぞって「プラスチックストローを廃止します」というのを報道していた時だったので、このプラスチックごみとストロー、森林管理の中で問題になっている間伐材の有効活用を掛け合わせました。
2018年にプラスチックストローを廃止問題と間伐材問題がうまくマッチしたので木のストローが生まれたというわけですね。
木を選んだ理由は間伐を促進させるためというのが根本的な目的です。
試作品では穴をあけただけの物を作ったのですが、それは“使い捨て”というより“何回も使える木のストロー”のイメージが強く、記者の方にも『作って終わりになるよね』と言われてしまいました。どういうことかというと、間伐材の活用とプラスチックのゴミ問題を解決する糸口になるアイテムとして木のストローを開発するには「10本作って終わり」ではいけないのです。環境に貢献できるようにしていくには、マイストローみたいになるよりも「使い捨ての木のストロー」を作ってどんどん間伐材を使い、適切にホテルや飲食店で使われ捨てられていく『循環ビジネスモデル』を作らないと開発する意味がないのです。それが、使い捨ての間伐材を活用した木のストローの形になりました。
当時、木のストローってネットでいくら検索しても全然出てこなかったんです。木のストローは想像したら木でストロー作ればいいんだなってイメージができると思うのですが、間伐材って細く弱いので、穴を貫通させることがとても難しかったんです。
なので、木材を0.15ミリの厚さにスライスして、それを少し角度をつけて巻き上げて製作しました。そこに至ってからもどういうノリを使ったらいいのか、どういう厚み、角度、巻き方がいいかなど結構苦労しました。スライスして巻くという形の木のストローはそもそも世の中になかったですし、世の中にないものを開発するって正解がわからないんですね。
紙、プラスチックそれぞれに利点があるのですが、プラスチックの代替品として生まれたのが紙ストローだと思ってるんです。普通、代替品は原料が必要で、それを作るエネルギーが必要なのですが、木のストローは使えば使うほどを森林保全と海洋保全に貢献できる。
そういうところが他のストローと違うところなんじゃないかなと思います。今は、機械化されてないので、巻く工程は身障者の方や高齢者の方が行っていて、雇用にも繋がっています。そういう原料や作る工程のところからもSDGsに繋がっていたり、環境に貢献できてるっていうのが強みだと思います。見た目が美しかったり、木を薄くスライスするっていう発想が海外の人ではなかなかなく、日本人ならではの発想だねと言われます。
どうしても紙ストローだと時間が経つとふやけたりするんですけが、木というのはお酒の樽にも使われるくらいなので、ずっと水に浸かっていてもふやけることがないんです。そういうところが紙ストローと違う点なんじゃないかなと思います。
当社は住宅会社なので、今思うと反対されて当然だと思います。あとは、やはり目の前の人からお願いされたことに対して、自分ができるところまでは一生懸命やりたいっていう気持ちがあったのと、色々なメディアの方と接したり、様々な企業の方と話す中で、どの分野・事業でもこれからの時代は「環境」っていうテーマが無視できない時代になると感じました。
住宅会社でありながらも、木を扱う会社として木造住宅を建てるだけではなくて、木を守ったり活かしたり、そういう活動をしないと住宅会社も持続可能性というのはないと思いました。
2018年は各飲食店などで紙ストローに切り替わったくらいの時期で、2018年12月に私たちの「木のストロー」を発表しました。その前日にちょうどガストさんのプラスチックストローが違う素材のストローに変わるくらいのタイミングだったので、まだまだ世の中に紙ストローが認知されていなかったんです。
当時は紙ストローが『口触りがトイレットペーパーの芯のようなものを連想する』という意見もありました。プラスチックストローにすごく慣れ親しんでいたので、何のストロー使っても『ちょっと違うな』って思うことあったんだと思います。紙ストローはふやけるというところが問題点として挙がっていたので、
そういう風になっていけばすごくいいなと思うのですが、どうしても木のストローは機械化されてないため手で作る分コストが高くなるんです。
なので、どこでも導入できるという状態にはなってないのですが、横浜市やJR東日本と一緒に取り組んで、地元の木材を使い、スライスした原料をその地域の身障者の方や高齢者の人に入ってもらって、飲食店やホテルで使う『地産地消モデル』を作っています。世界中の飲食店に導入されるというより、事業活動としてみんなで取り組んでいくプロジェクトとしているので、色々な国・地域の木材が、地元の人たちによって作られて、広まったり使ってもらったりすることで、
私は開発できる確信があったわけでもなく、特別な能力や知識がなくても、人の繋がりやその人自身ができる範囲で一生懸命やることで、色々な世界が広がり、実現可能性が高まっていく・・・そんな実感をしているんです。なので今、キャリア教育とか大学生によく話すのは、組織の中でチャレンジするっていう精神があまりない人も、チャンスが巡ってきたりしたら、
これから何をするにも持続可能性があることっていうのがすごく大切だと感じています。木のストローもそうですし、自分たちの事業が持続可能になるにはどうしたらいいかなっていう視点を、一つ持つだけでも社会が変わってくのではないかと思います。
コロナ禍になって今までのように普及活動ができなかった時に、書籍を書かせてもらいました。『住宅会社がストローをつくってどうするんだ!』というタイトルで、来月フジテレビさんでドラマ化されます。木のストローを普及させていくことはもちろんなのですが、開発の裏側でイチ個人や会社がどのように変わっていったのかを、知っていただけるかと思います。
上記にある通り、2月26日(土)にはフジテレビにて木のストローの開発秘話がドラマ化されます。放送時間は15時30分~16時30となっており関東圏を中心に放送されます。
出演者は堀田真由さん、鈴木保奈美さんとなっており、出版されており木のストローの書籍(扶桑社)を元ドラマ化。
ドキュメンタリー書籍『木のストロー』も全国の書店で販売中です。
取材協力:株式会社アキュラホーム SDGs推進室室長 西口彩乃
取材:株式会社コネクティ 高橋賢
国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。
目標 15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。 15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。 15.3 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。 15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。 15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。 15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。 15.7 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。 15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。 15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。 15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。 15.b 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。 15.c 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。