脱炭素経営EXPO開催 三井物産の可視化デジタルソリューションの未来を訊く
「脱炭素経営EXPO 春」が東京ビッグサイトで開催され、数々の企業が脱炭素に関する出展をしていました。その中でSDGs fanは三井物産さんとe-dashさんにお話しを伺いました。
「脱炭素経営EXPO 春」が東京ビッグサイトで開催され、ゼロカーボンコンサルやGHG排出量見える化、省エネソリューションなど、様々な脱炭素ソリューションが展示されました。参加者は脱炭素経営を目指す企業の経営者や経営企画、ESG・サステナブル部門などでした。また、同時開催のイベントにはエネルギーやエコに関する展示があり、注目を集めました。
2023年3月15日から17日まで、東京ビッグサイトで「脱炭素経営EXPO 春」が開催されました。このイベントでは、ゼロカーボンコンサル、GHG排出量見える化、コーポレートPPA、省エネソリューションなど、あらゆる脱炭素ソリューションが出展され、脱炭素経営を目指す企業の経営者、経営企画、ESG・サステナブル部門などが参加しました。
また、同時開催されたイベントには、「FC EXPO 水素・燃料電池展」「PV EXPO 太陽光発電展」「二次電池展」「スマートグリッドEXPO」「WIND EXPO 風力発電展」「バイオマス展」「ゼロエミッション火力発電 EXPO」「サーキュラー・エコノミー EXPO」があり、すべてエネルギーやエコに関するものでした。
SDGs fanは、今回その中から「脱炭素経営EXPO 春」に参加してきました。以下はその模様です。
e-dashは、電気やガスの請求書をアップロードするだけで、企業単位のCO2排出量を自動的に算出し、月々の使用量とコストをデータ化することができます。これにより、管理の手間を省きながら、より効率的かつ正確にCO2排出量を把握できるとされています。
また、三井物産の可視化ソリューションサイト『Green&Circular(グリーアンドサーキュラー)』や、脱炭素に貢献しデカボスコアが導入されている商品が展示されたEarth hacksなども、ブースで見学することができました。
SDGs fanは、三井物産株式会社執行役員でデジタル総合戦略部長の真野雄司氏と、同じく三井物産株式会社デジタル総合戦略部デジタルテクノロジー戦略室の上野昌章氏に、脱炭素に関するお話を伺うことができました。以下にその模様をお届けします。
――三井物産は脱炭素ソリューションに注力していますが、具体的にどのようなビジネスを展開しているのでしょうか?
真野雄司氏(以下、真野氏): 三井物産は総合商社でもあり、元々とても大きい会社です。我々は16の事業本部を持っており、この16個の事業本部全体で脱炭素に取り組んでいます。それぞれの視点は異なるのですが、様々な取り組みを進めています。
今日ここに出展しているのはその中の「可視化」と言われるものです。企業や製品がどのように二酸化炭素を排出しているか、それをちゃんと「見える化」しましょうという事業です。
――脱炭素とデジタルDXはどのように関連しているのでしょうか?
真野氏:デジタルがどう絡んでいるかという疑問なのですが、可視化するためには数値化が必要であり、そのためにはデータの収集や分析が重要だと思います。私たちはデジタル部隊であり、技術的な要素やソリューションを提供し、新しいビジネスモデルを作り上げることが仕事です。DXは脱炭素に密接に関連していると考えています。
――三井物産がDXに注力する中で、データドリブン経営やDX人材戦略を推進しているとお聞きしました。これらの取り組みが、脱炭素やSDGsの達成にどのように貢献するとお考えですか?
上野昌章氏(以下、上野氏):まず、データがなければ何も始めることができません。たとえば、「どの程度の二酸化炭素を排出しているのか?」という問いに対して、まずはそのデータを正確に把握することが必要であり、そのデータをどのように扱うかが重要になってきます。私たちの仕事はデータを活用可能な形に整理し提供することです。しかし、それだけではユーザーがデータを活用できず意味がありません。そのため、DX人材の育成をし、各事業を担当する現場の人たちがデータを使えるようになることで、新たなビジネスモデルが生まれ、脱炭素やESGに繋がると考えています。
また、データを扱う上での課題はAIを活用することで解決しています。AIの最も優れた機能のひとつである未来予測です。過去のデータを積み重ねることで、将来起こり得ることを予測することができます。
――AIの未来予測の例を教えてください。
上野氏:データを予測に使うことで、エネルギー生産量を正確に把握し、全体最適な方法を採ることができます。例えば、太陽光や風力発電などのエネルギー産業が挙げられます。これらの発電は、風の吹き具合や日照時間などによってどれだけのエネルギーが生まれるかを予測する必要がありますが、現在の状況を正確に把握することは難しいです。しかし、データを積み重ねて予測することで、近未来におけるエネルギー生産量を予測できこの予測によって、どの程度のエネルギーが生まれるかを正確に把握し、他の発電方法のコントロールやエネルギーの節約など、全体最適な方法をとることができます。
――脱炭素社会において最前線で活躍されている三井物産の取り組みについて、最新の動向を教えてください。また、日本と海外での脱炭素の取り組みについて、比較してみてどのようなギャップがあるのかお聞かせください。
上野氏:海外もそれぞれですが、やはり1番進んでいるのはヨーロッパで、随分昔から取り組んでいて、制度が非常に明確です。EU域内排出量取引制度(EU-ETS)というものもあり、CO2の排出というのが金銭的な価値に換算され、しかもその相場みたいなものが公開されています。そういう環境がすごく整理されています。当然、日本もそういう環境整備をしようということを経済産業省あたりが行っていて、GXリーグというのが一昨年ぐらいから行われています。三井物産としてもGXリーグに参加して日本国内のETSの市場を作っていくような実証実験にも参加しています。ようやくニーズが明確になってきて、それを具体的なルール化していくというのが、これからの段階からです。ヨーロッパから何年遅れているかは分からないですが。
――三井物産が立ち上げた脱炭素ソリューションサイト、『Green&Circular』について教えてください。また、現在のサイトについて、三井物産の中での位置づけや脱炭素社会における役割についてもお聞かせください。
真野氏:先ほど申し上げたように、広い領域で事業を展開しています。16の事業本部があり、それぞれ活動しているのですが やはり1番重要なことは、この16の事業本部がそれぞれにやるとバラバラな取り組みになってしまわないようにすることです。それぞれ実はいい取り組みをしているのですが、それらの資産やソリューションを全体的な視点からきちんと示すことが重要です。そこで出来たのが『Green&Circular』です。16の事業本部が個々にやっていたものを、『じゃあ全体として三井物産はどういうことが出来るのか?』ということを俯瞰して分かるようなサイトです。必ずしも1つのソリューションだけで、全てが解決するわけでなく、可視化をした後にはそれをどうコントロールするか?どう減らしていくか?そして減らし切れないものをどのようにカバーするか?ということが必要になり、複数の違うソリューションを合わせることで最終的に解決することができるという全体像が見える。それをきちんと明示し提供できるのが、『Green&Circular』の1番の大きな目的です。
――上野様が16部署の脱炭素事業を纏めるため工夫されたことを教えてください。
上野氏:私は16ある部署・事業のまとめ役となります。事業の責任としては、各事業本部が担っていますが、最初は、社内の中でも誰が何をしているかが整理されていなかったため、まずはきちんと見える化し、イントラネット上で『この部署がこんなことをやっています』と『担当者はこの人です』という仕組みを作りました。すると、整理されたコンテンツがどんどん溜まり、外部向けにもお客様から見てもらえるものとして、同じような形でウェブサイトを公開しました。私たちは、デジタル総合戦略部として、そうした事業本部で行っているデジタルに関連する部分にサポートする役割を担い、各事業部と連携しながら集約したものを内外に向けてサービスとして提供しています。
真野氏と上野氏のインタビューは以上になります。
今回のインタビューを通して、私たちは地球上で生きる私たち人間にとって重要なテーマについて考える機会を得ました。自然災害による被害や環境破壊など、地球環境への影響が深刻化している現代社会において、私たちは生きるための環境を守ることが必要不可欠であると感じます。
その一方で、現代社会は高度な技術とエネルギーを必要としており、地球環境への負荷を軽減するための取り組みも必要不可欠です。インタビューを通じて、再生可能エネルギーや持続可能な開発に関する多くの知見を得ることができ、私たちが地球環境を守るためには、個人レベルでの取り組みだけでなく、企業や政府などの大きな組織にも積極的な取り組みが求められることを再認識しました。
私たちが生きる地球環境を守るためには、今後もさまざまな分野での取り組みが必要不可欠であり、私たち一人ひとりがその重要性を理解し、自分にできることから実践していくことが大切です。私たちは、地球環境を守るために、今回得た知見を活かし、積極的な行動を起こしていくことが求められています。
その中で三井物産様は「見える化」を始めとする取り組みを行っており、特に社内で培ったコンテンツを外部に開放したことが『Green&Circular』となるようです。
インタビューに協力頂いたのは、三井物産株式会社 執行役員 デジタル総合戦略部長 真野雄司氏、三井物産株式会社 デジタル総合戦略部 デジタルテクノロジー戦略室(Green&Circular 編集長)の上野昌章氏です。
続いて、三井物産ブースと共同でブースを出していたe-dashの代表取締役社長 山崎 冬馬氏にお話しを伺うことが出来たのでその内容を紹介したいと思います。
――山崎様がシリコンバレーに駐在していた期間に行ったクリーンテック分野のスタートアップへの投資や共同事業開発についてお聞かせください。具体的に、どのような事業に投資したのか、その背景や理由は何か、今後のクリーンテック分野における投資の方向性についてなど。
山崎冬馬(以下、山崎)氏:私がシリコンバレーにいたのは2015年から2020年までで、結構な数の投資を行ってきました。太陽光分散型の太陽光や蓄電池を活用したエネルギーマネージメントのスタートアップ、そしてEV充電など、特にエネルギーに関連し、脱炭素を実現するようなスタートアップ企業に投資しました。これらのスタートアップ企業に投資した背景や理由は、当時のシリコンバレーでのトレンドや、三井物産が目指す脱炭素社会の実現に向けて、注目していた分野だからです。また、これらのスタートアップ企業に対して、日本展開や米国内での展開などで共同事業の立ち上げを推進しました。
―― 山崎様が代表を務めるe-dashについて、具体的なサービス提供内容やe-dashならではの特徴、ビジネスモデル、また、e-dashが目指す未来像や今後の展望についてお聞かせください。
山崎氏:元々三井物産の中で脱炭素を注力分野として位置づけている中で、新規事業として2021年年初にe-dashが立ち上げられました。e-dashのミッションは、脱炭素化への流れを加速するために、何から始めたらいいかと迷う日本の企業や自治体に伴走し、脱炭素のご支援をしています。
e-dashは、自社の排出量を把握することがはじめの一歩として大切だと考えており、そのために排出量の可視化を入り口として提供しています。足元の現状を確認し、その結果に基づいて、目標設定や具体的なロードマップを策定し、最後には実際の削減施策のご提案や実行支援まで伴走することで、可視化に留まらないサービスとして支援を提供しています。
e-dashの特徴は、ユーザー目線でサービスを提供していることです。使いやすさや手間の少なさを重視し、高い評価を得ています。例えば、自社のスコープ1と2(※)と呼ばれる自社の排出量については、エネルギーの請求書をアップロードするだけで、国内で唯一のサービスを提供しています。このサービスが大変評価され、地方銀行や信用金庫など100超の金融機関がe-dashと提携し、取引先に広く展開されています。
※スコープ1:自社による温室効果ガスの直接排出
スコープ2:他社から供給されたエネルギー(電気・熱・蒸気)使用時の間接排出
スコープ3:Scope1、2以外の間接排出
山崎氏:その意味では、当社はまず自社の排出量を把握することが最初のステップであり、これを会社の重要な指標として定着させ、継続的にモニタリングを実施することを目標としています。次に、削減する目標を設定し、どこまで削減するかをコミットし、外部に対しても開示できるようにしていきます。ここで定めた目標やロードマップに基づき、e-dashとして削減策の提案や実行支援を提供することで、顧客と一緒に着実な脱炭素化の推進を進めていくことになります。
e-dash山崎氏のインタビューは以上になります。
このインタビューを通じて、三井物産の脱炭素に対する取り組みについて深く知ることができました。「自社の排出量を最初に把握し、その後に目標を設定することで脱炭素に向けたステップを踏むことができる」と山崎氏は述べ、また、顧客と一緒に脱炭素のプロセスを歩むことで、より持続的な脱炭素に取り組んでいくという考え方も示されました。
さらに、e-dashというサービスを通じて、三井物産は排出量の見える化を行い、顧客に対して分かりやすく情報を提供することで、脱炭素に向けた取り組みを支援していくとのことです。
今後も、三井物産は継続的に脱炭素に取り組み、地球環境の保全に貢献していくことが期待されます。
国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。
目標 15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。 15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。 15.3 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。 15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。 15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。 15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。 15.7 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。 15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。 15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。 15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。 15.b 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。 15.c 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。