スポーツに関わる企業・団体がサステナビリティに関してさまざまに議論
日本財団は、アスリートと共に社会課題解決の輪を広げていくことを目的とした「HEROs~Sportsmanship for the future~」プロジェクトにおいてサステナビリティカンファレンスを開催しました。
日本財団(東京都港区、会⻑ 笹川陽平)は、アスリートと共に社会課題解決の輪を広げていくことを目的とした「HEROs~Sportsmanship for the future~」プロジェクトにおいて、公益社団法人 日本プロサッカーリーグと共に日本のスポーツ界におけるサステナビリティの取り組みの機運を高めることを目的としたサステナビリティカンファレンスを開催しました。
HEROsでは、さまざまな社会課題に対する活動を推進していますが、2024年3⽉にスポーツ界横断で使い捨てプラごみゼロを⽬指すプロジェクト「HEROs PLEDGE(ヒーローズプレッジ)」を始動しました。HEROs PLEDGEでは、気候変動や海洋ごみ問題の⼀因である使い捨てプラごみをフォーカスし、まずは2027年度末までに主要スポーツの興⾏(試合・⼤会)での使い捨てプラごみの“半減”に取り組んでいます。⼀⽅、環境省と連携協定を結んでいるJリーグは、Jクラブとともに、気候変動問題の解決に向けたさまざまな気候アクションに取り組み、地域に根付いたアクションを⾏なっており、HEROs PLEDGEのパートナー団体としても参画しています。
この⽇⾏われたサステナビリティカンファレンスのスペシャルゲストとして、イングランドプレミアリーグ トッテナム ホットスパーのChief Revenue Officerを務めるライアン・ノリス⽒や、Executive Directorのドナ=マリア・カレン⽒、アンジェ・ポステコグルー監督らが登壇しました。トッテナムは、様々なスポーツリーグの環境⾯でのサステナビリティの取り組みを評価する「Sport Positive Leagues」のランキングでプレミアリーグ4年連続1位を獲得しており、2040年までにCO2排出量をゼロにすることを⽬標として、使い捨てプラスチックの削減や、再⽣エネルギーの活⽤、トップチームとアカデミーの全選⼿に対してサステナビリティに関する教育やトレーニングを⾏っています。
カンファレンス開催の冒頭、野々村芳和 Jリーグチェアマンが「昨年、Jリーグ開幕30年⽬の節⽬にサステナビリティ部を新設しました。Jリーグは今、選⼿の育成だけでなく、ホームタウンである地域と⽇常⽣活を守り、これからもサッカーが当たり前にできる環境を作っていくための気候変動に向けた取り組みも⾏っています。今⽇はサッカー界でサステナビリティ活動も含め⼤成功を収めているトッテナムから話を聞くことで、⽇本での取り組みがより前向きに、社会への良い影響に繋がるような、そんな⾵が吹くことに期待しています。」とご挨拶し、⽇本財団 専務理事 笹川順平は「⽇本財団は世のため⼈のために助けることを使命とし⽇本だけでなく世界に活動を広げています。特に8年前にHEROsを⽴ち上げ、サッカーだけでなくさまざまな競技で社会貢献スポーツに関わる企業・団体がサステナビリティに関してさまざまに議論活動を進めてきました。」と⽇本財団やHEROsをのこれまでの活動を振り返りながら、「特に今年は暑さの影響でスポーツができない状況になってきています。その中で何ができるのか。今⽇はSport Positive Leaguesで1位を取り続けているチームから、どのような活動をチームやスポーツ界で広げようとしているのか、社会貢献をすることによる新しい企業価値の向上についても勉強できればと思います。今⽇は少しでもみなさんの参考になればと思います。」とご挨拶しました。
その後、トッテナムのChief Revenue Officer ライアン・ノリス⽒から、世界でも注⽬されるトッテナムの脱炭素ゼロを⽬指した取り組みについてのお話しがあり、Executive Director ドナ=マリア・カレン⽒から、選⼿へのサステナビリティに関する教育をいかに進めているかや、サステナビリティに取り組みたいと考える企業をクラブがどのように巻き込んでいったのか、スポーツクラブと取組むことによる企業のメリットといったことを、事例を交えて紹介いただきました。サステナビリティに取り組む上で⼤切なこととして、クラブや企業にはビジネスとして社会に対する責務があり、短期的にはコストが⾼いと感じられるが、ボトムラインをもちながら⻑期的な視点で取り組むことの必要性や、経営陣が意思をもって組織を動かすことの重要性について触れられました。⾼い⽬標を掲げることについての恐れはないかという質問が会場から出ると、「⾼い⽬標を掲げることで、たとえ達成できなかったとしても、そこにむけてチャレンジすることで⽬標により近づいた結果を出すことができる」と語りました。
スポーツにおけるサステナビリティの意義についてのトークセッションでは、トッテナム会⻑のダニエル・レヴィ⽒が、「これまでと違うことをやる、チャレンジする」というクラブのモットーがあり、さまざまなチャレンジをしていきたというお話しや、最もグリーンなクラブであるという評価を得たことで商業的にも利益が⽣まれ、スポンサー企業にもメリットが⽣まれていることなどを話しました。横浜F.マリノスの監督経験があり、現在トッテナムの指揮をとるアンジェ・ポステコグルー監督は、4年ぶりに⽇本に戻った喜びを語り、トッテナム
の恵まれた環境や、クラブには多種多様なバックグラウンドがある選⼿が集まるからこそ異なる視点で議論が⾏われ、成⻑することができるとコメントしました。また、Jリーグがトップレベルの戦いをしていることや⽇本代表の活躍についても触れ、Jリーグがヨーロッパでもトップ5のリーグに⼊るのではないかと話しました。
その後、元競泳⽇本代表で現在SDGs in Sports代表を務める井本直歩⼦⽒より、⽇本のスポーツ会における取り組みの紹介として、プロ野球やBリーグで多数のクラブが試合会場でのCO2削減や再⽣可能エネルギーの使⽤に取り組んでいる様⼦や、地域を巻き込んでいる事例紹介があり、Jリーグ執⾏役員 サステナビリティ領域担当の辻井隆⾏⽒が、⽇本のスポーツ界がいかに気候変動による影響を受けているか、パフォーマンスへの影響についての現状と、Jリーグが取り組んでいる活動についてのご紹介をいただきました。
また、スポーツ団体関係者向けに⾏われた第2部では、トークセッションのゲストとして元サッカー⽇本代表の北澤豪⽒や元サッカーイングランド代表で現在はトッテナムのアンバサダーを務めるレドリー・キング⽒を迎え、サステナビリティの推進においてアスリートの役割について、選⼿同⼠でも興味関⼼も異なる中で、どのようにアプローチすることができるのか、という議論が繰り広げられました。病気と向き合う⼦どもとそのご家族のための滞在施設 ドナルド・マクドナルド・ハウスの⽀援を⻑年続けている北澤豪⽒は、「サポートを始めたころは、チャリティフットサルとかをやることが多かったけど、社会貢献で楽しんでいいのか、というところがあった。今は⼊り⼝がオープンになってきて、⾃分ができることから協⼒し合うことが当たり前になっているので、選⼿たちにも参加しやすくなっていると思うし社会が変わってきていることを感じる。アスリートには影響⼒があるし、選⼿がクラブの誇りになれるような可能性も⼤いにあると思う」とコメント。井本直歩⼦⽒は、「アスリートでも興味を持っている⼈が増えていると思うので、まずは誰か⼀⼈でもよいからそういう⼈を⾒つければ良いと思う。チームやクラブからアスリートにも声をかけてみて欲しい。」と呼びかけました。
レドリー・キング⽒によると、トッテナムでは選⼿が加⼊する際にサステナビリティに関するトレーニングが⾏われているそうで、「選⼿にとって⼀番⼤切な責任は、プレーで良いパフォーマンスをすること。遅いということは絶対ないので、みんなでちょっとずつできることをやればよくて、それが⼤きな違いになる。」と⼒強く語りました。世界ではスポーツ⼒の社会活⽤が広がり、社会に貢献できることがスポーツの価値であると認められていることを受け、参加したスポーツ団体、アスリート約100名は、現状の課題とこれからのアクションについての議論を重ねました。
Jリーグ執⾏役員でサステナビリティ領域担当の辻井隆⾏⽒は、カンファレンス全体を通じてさまざまな発⾒があったこと、競技を超えてサステナビリティについて考え議論したこのカンファレンスの意義を語り、「スポーツ界だからこそ、トライアンドエラーがあってもよいと思う」と、スポーツ業界全体が⾏動する重要性を伝えました。カンファレンスの最後には、森保⼀ サッカー⽇本代表監督からのビデオメッセージが届き、「気候変動問題に⽴ち向かっていくために、夏場にサッカーやスポーツをすることにおいて、危険性やリスクを多くの⼈に知ってもらいたい、同時に中⻑期的な⽬線で気候変動を⽌める動きを考えなければなりません。企業や⾃治体と連携しながら、だれもがいい環境を、ともに前進していければいいと思います。」と熱いメッセージを語り本会は終了しました。
名 称 : サステナビリティカンファレンス
⽇ 時 : 7⽉25⽇(⽊) 9:30〜17:50
場 所 : 笹川平和財団ビル11階 国際会議場
野々村芳和 /Jリーグチェアマン
ライアン・ノリス / トッテナム ホットスパー Chief Revenue Officer
ドナ=マリア・カレン/ トッテナム ホットスパー Executive Director
ダニエル・レビー/ トッテナム ホットスパー 会⻑
アンジェ・ポステゴグルー / トッテナム ホットスパー 監督
レドリー・キング/ 元イングランド代表、 トッテナム ホットスパー クラブ・アンバサダー
北澤 豪 / Jリーグ選⼿OB、元⽇本代表、JFA参与、⽇本障がい者サッカー連盟会⻑
辻井 隆⾏ /Jリーグ執⾏役員 (サステナビリティ領域担当)
井本 直歩⼦ / 元競泳⽇本代表、⼀般社団法⼈SDGs in Sports 代表理事
笹川 順平 / ⽇本財団専務理事
国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。
目標 3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
3.1 | 2030 年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生 10 万人当たり 70 人未満に削減する。 |
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3.2 | すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。 |
3.3 | 2030 年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。 |
3.4 | 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。 |
3.5 | 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。 |
3.6 | 2020 年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。 |
3.7 | 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。 |
3.8 | すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 |
3.9 | 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。 |
3.a | すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。 |
3.b | 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。 |
3.c | 開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。 |
3.d | すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。 |