多文化共生授業
PROSPERITY

熊本大学×桜十字グループ外国人材と共に学ぶ“多文化共生授業”を始動

桜十字病院は、複数の企業・団体と連携し、熊本大学文学部の授業『情報技術応用演習』を企画・運営し、学生に新たな学びを届けます。

医療・介護・予防医療を軸にウェルビーイング・フロンティアを目指す桜十字グループの桜十字病院は、このたび複数の企業・団体と連携し、熊本大学文学部の授業『情報技術応用演習』(地域における多文化共生 〜 価値創造人財育成)を企画・運営し、学生に新たな学びを届けます。



同グループは、医療・介護・予防医療の現場を通じて、多くの外国人と日々関わっています。熊本県では農業や林業を中心に外国人労働者の受け入れが進み、半導体大手TSMCの進出も追い風となり、2025年には県内の外国人人口が28,000人を突破。前年比+24.2%と全国で最も高い増加率を記録しており、多文化共生の重要性はますます高まっています。¹や文化の相互理解が不可欠となる中、桜十字グループは単なる人材受け入れにとどまらず、海外に向けた日本語教育や介護スキル研修を実施し、介護の質そのものを高める取り組みを続けてきました。現場で培った経験を教育につなげることで、外国人材が安心して働き、地域に根付いて活躍できる仕組みづくりを進めています。
¹ 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和7年1月1日現在)

今回の授業では、桜十字病院をフィールドワークの場として提供し、学生に実際に働く海外人材や日本語学校の学生へのインタビューを体験してもらいます。教室だけでは学べないリアルな課題や声に触れることで、学生が地域の課題を「自分ごと」として捉え、現実性と共感性を備えた解決策を考える力を育むことを目的としています。桜十字病院のフィールドワークを通じて、学生には「熊本にいながら海外とつながる仕事ができる」という可能性も感じてもらいたいと考えています。こうして育まれる学びが、地域社会の多文化共生を推進すると同時に、県内学生の未来のキャリア形成にもつながることを期待しています。

本授業は、地域課題の理解から解決策の創出までを体験できる、3部構成で進行します。

1.インプット(Input)
地域共生社会の本質や熊本における現状・課題を整理し、課題解決や新たな価値創造のための方法論、プロセス、ツールを学びます。演習を通して、課題解決の基本を身につけます。
2.フィールドワーク(Fieldwork)
学生は県内で働いたり学んだりしている外国人を訪問し、彼らの「困りごと」や「悩み」といったリアルな課題に触れます。ここで得た情報や気づきが、アイデアの出発点となります。
3.アイディエーション(Ideation)
グループごとに、熊本での多文化共生を強化・改善する具体的な企画を考えます。生成・選択・開発のプロセスを通じて、現実性と共感性を備えた課題解決策を生み出します。

最終日には、学生が考えた企画を公開の場で発表するプレゼンテーション・コンテストを実施します。提案の対象は地域の「産・学・官・金・媒」で、審査員として5名(敬称略)をお招きします。授業で生まれたアイデアが、実際に地域での価値創造につながることを目指しています。

【最終日プレゼンテーション・コンテスト審査員】
櫟本麻理: 熊本県 国際・くまモン局長
小山田吉宏: 株式会社九州フィナンシャルグループ 執行役員 事業戦略部長
荒竹貴之: 株式会社熊本日日新聞 業務局業務推進本部 地域創成部長
小野史修: 熊本朝日放送株式会社 地域プロモーション局 プロデューサー兼担当局長
デブコタ ハリ: 国立大学法人熊本大学 大学院人文社会科学研究部 助教



担当教員: 佐々木伸吾, 江川良裕
授業計画: 講義・演習・プレゼンテーション
開講年次(学年): 2年生以上
開講形態 前期 夏期集中15回 [2 単位]

第1 回: 9月9 日(火)2限|オリエンテーション
◎本授業について: 江川(熊本大学), 佐々木(九州博報堂)
授業内容や評価方法の案内、受講生に求められる作業課題に関する説明

第2 回: 9月9 日(火)3限|講義
◎多文化共生社会概論、熊本における課題: 遠藤(熊本県立大学)・ヴィルヘルム(JICA), 上村(桜十字グループ)
文化的背景が異なる人々との共生について、日本および熊本の現状と課題および共生に向けた試み

第3 回: 9月9 日(火)4限|講義
◎地域における題解決とは(1): 佐々木(九州博報堂)
地域先導型課題解決の必要性とそのソリューションの枠組み

第4 回: 9月10 日(水)2限|講義・演習
◎地域における題解決とは(2): 佐々木(九州博報堂)
地域先導型課題解決の事例分析(アイデア発想の原点、問題と課題の理解、課題の言語化)
第5〜6 回: 9月10 日(水)3〜4限|講義・演習
◎熊本における多文化共生に関する課題検討: 佐々木(九州博報堂)
熊本における多文化共生の現状に対する個人レベルの体験や想いの言語化 、フィールドワークでのインタビューのベースとなる仮説づくり(リボンフレーム©の利用)

第7〜8 回: 9月11 日(木)3〜4限|フィールドワーク
◎多文化共生の現場取材・インタビュー
イスラム教信者を超えた地域コミュニティとしても機能するイスラム教寺院、ウクライナ避難民受入れや在住外国人との共生を推進する自治体および一般社団法人、外国人技能実習制度に対する支援を提供している協働組合への訪問、関係者に対するインタビュー
▶イスラミックセンター, 熊本市国際交流会館, 玉東町役場(GOJOplus), くまかい協同組合

第9〜10 回: 9月12 日(金)3〜4限|フィールドワーク・ディスカッション
◎多文化共生の現場取材・インタビュー
・医療・介護の現場で働く技能実習へのインタビュー
・ 桜十字グループがミャンマーに開設している日本語学校に対するZOOM インタビュー、シェア&リフレクション
・フィールドワークで得た情報 の共有およびディスカッション
▶桜十字病院

第11〜13 回: 9月19 日(金)2〜4限|ディスカッション・グループワーク
◎企画立案・成果物作成 グループ・ワーク
グループ単位での多文化共生における課題解決に関するテーマ設定と企画案の作成

第11〜13 回: 9月19 日(金)2〜4限|プレゼンテーション
◎コンテスト形式での公開プレゼンテーション
熊本で多文化共生を進める「産・学・官・金・媒」を代表する組織から、審査員を迎え企画コンテストを開催
▶熊本大学くすの木会館 レセプション・ルーム



佐々木伸吾: 株式会社九州博報堂 マーケティング局 局長
遠藤浩昭: Kumamoto Kurasu 会長 / 熊本県立大学 国際教育交流センター 特任教授 / 熊本県 国際政策相談役
ヴィルヘルム・ヨハネス: J Kumamoto Kurasu 事務局長 / JICA九州 国際協力推進員
江川良裕: 熊本大学 大学院人文社会科学研究部 特任准教授
「医療・介護の現場において海外人材は欠かせない存在です。多文化共生を通じて地域の未来を築く担い手を学生と共に考えていきたいです。」
桜十字グループ 人材開発本部 本部長|上村啓輔



イスラミックセンター(熊本市中央区)
熊本のイスラム教信者が集うマスジド(イスラム教寺院)。2016年熊本地震の際には避難所としての機能や全国のマスジドからの支援を受け、宗教に関係なく支援物資等を共有したことで知られています。

玉東町役場 / GOJO Plus (玉名郡玉東町)
玉東町は、人口約5,200人という小規模事態対でありながら、5世帯15人のウクライナ避難民を自治体主導で受け入れています。また、GOJOplus は、多文化共生や国際協力などの分野で活動する一般社団法人で、町と連携し、日本語や生活情報の支援を実施されています。

くまかい協同組合(熊本市東区)
特定技能制度、外国人技能実習制度における実習生と企業の仲介、サポートをおこなう組合であり、海外人材の入社前研修や入社後の生活指導などをおこなっています。

桜十字病院/桜十字グループ(熊本市南区)
介護現場での外国人を積極的に採用しているほか、ミャンマーとフィリピンに日本語教育機関を設立するなど、海外人材の育成に注力しています。

本授業を通じて、学生は熊本の地域課題を自分ごととして捉え、現実性と共感性を備えた解決策を生み出す力を養います。授業で生まれたアイデアは、産・学・官・金・媒の連携により地域社会での実装も期待され、熊本における多文化共生の推進や社会課題の解決につながる可能性を持っています。



外務省 SDGsサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標10 国内および各国間の不平等を減らす
10.1 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成⻑率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
10.4 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
10.5 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
10.6 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
10.7 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
10.a 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
10.b 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
10.c 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。