「平和と公正」の土台となる法制度。世界の実状と取り組みとは?
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「平和と公正」の土台となる法制度。世界の実状と取り組みとは?

日本は世界でも有数の「治安が良い国」と言われています。その治安の良さ故に、海外へ観光に行く際には国内にいるときと同じ感覚でいると危ないことも多いでしょう。

執筆者:井上 聡

日本は世界でも有数の「治安が良い国」と言われています。

その治安の良さ故に、海外へ観光に行く際には国内にいるときと同じ感覚でいると危ないことも多いでしょう。
例えば、スリや置き引きに合わないよう荷物は肌身離さず持つ、夜道のひとり歩きは絶対してはいけないなどは、日本人向けの旅行ガイドマップでよく見かけます。

そのような平和な社会が成り立つのは「法制度」が整っているためです。
日本は欧米の法制度を学び、日本に根付く法制度を作り上げてきた歴史があります。

そしてその法制度は、SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」にもあるように、持続的な社会と経済成長の土台とも言えます。
日本はその知識と経験をもって、平成6年から20年以上、開発途上国の法制度の整備を支援してきました。

一見、我々の日常には関係のないように思えるこの取り組みですが、途上国の法制度整備支援によって、より安心で安全な国際関係を築くことが可能になります。
今回はそうした法制度についてみていきましょう。

平和や公正に関する課題は、暴力やテロだけでなく、汚職や贈賄、近年では情報格差なども含まれています。
SDGs目標16では、これらに対して目標・ターゲットを設定し、平和で包括的な社会の推進を目指しています。


SDGs目標 16
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力および暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2 子どもに対する虐待、搾取、人身売買およびあらゆる形態の暴力および拷問を撲滅する。
16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.10 国内法規および国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
〔引用:グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン〕

そしてこれらを実現するための具体的な対策となるのが法制度です。

それでは具体的な事例を見ていきましょう。

先に上げたように日本では欧米の法制度を参考に今の法律が作られてきました。
最も有名なところでは、憲法第9条でしょう。

第二章 戦争の放棄
〔戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認〕

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
〔引用:衆議院 日本国憲法〕
これは世界にも例を見ない法律で、それゆえに、国際社会の変化により見直しが求められてもいます。

日本同様、世界でもユニークな取り組みを行っているのが永世中立国です。
最も代表的な国・スイスのほかに、ベルギー、オーストリアなど、いくつかの国が永世中立国として関係諸国や国連議会にて承認を受けています。

永世中立国は、他国に対して武力を行使せず、また他国間の戦争にも参加せず、武力行使を義務とする同盟などは締結しないこと(局外中立)を誓約しています。
やむを得ない自衛の場合を除いて武力を行使しないことを誓約し、条約締結国はその独立と中立を承認し、保障します。
誤解されがちですが、こちらは非武装というわけではありません。

また、平和を考える時に切っても切れないのが核の問題です。
日本では、「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まない」という非核三原則を掲げています。
世界では未だ核を保持している国が存在し、何度も協議の上、抑制を図ってきました。

核兵器の不拡散に関する条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons : NPT)は、1968年7月1日に署名開放され、1970年3月5日に発効されました。
5年ごとに運用状況を点検する再検討会議が米ニューヨークの国連本部にて行われています。
世界の秩序を守るために必要ではあるものの、今後も注目が集まる話題です。

国連からも様々な法律が公布されており、総称して「国連法」と呼ばれています。
商取引やテロ対策だけでなく、環境、海洋、人道法など、広範にわたる国家間の共通の関心事項を取り上げ、批准する国家を法的に拘束する500件以上の多国間協定の締結に尽力してきました。

今の私たちの生活はこれら様々な取り組みの上に成り立っているのです。
では、「平和と公正」のために私たちができることは何でしょうか?
1.国内外の報道に興味を持ち、主体的に情報収集する
2.法律について知識を持つ
3.世界中の人々と交流を持つ


まずは、我が国が直面している重要な課題や、国外の報道について情報収集してみましょう。
日本国内にのみならず、世界に目を向け違いを知ることで今置かれている経済状況などを客観的に認識することができ、より一層世界の情勢が身近なものになるでしょう。

海外の大学では、学生が飲み屋で選挙や政治家の話をするのが普通だそうです。法律を学ぶことを難しいことと思わず、様々な国の事例を楽しみながら知っていきましょう。

そして世界には、様々な文化的背景を持った人々が生活しています。お互いに興味を持ち、どんな生い立ちがあるかを知ることが、紛争や迫害を防ぐことに繋がると信じています。

開発途上国の法制度充実に貢献するといった大層なことはできなくとも、個人が身近なところから意識して行動することが重要です。
普段見るニュースの中から知らない情報を自ら調べて補足するなど、世の中の流れや情報に対して敏感になることで、秩序ある社会貢献に繋がると思います。

SDGsの課題を解決するための取り組みを支える法制度も随時制定されています。
こうした取り組みや活動のおかげでわたしたちの生活が成り立っていることを知り、何か自分にもできることがないかを考えるきっかけになれば幸いです。

・外務省 海外安全ホームページ
・外務省 非核三原則
・外務省 核兵器不拡散条約(NPT)の概要
・Global Peace Index 2019
・How US gun culture compares with the world(CNN)
・国際連合広報センター 国連法
・世界史の窓 世界史用語解説 授業と解説のヒント 永世中立