SDGsが目指す「平和と公正」な世界とその取り組みとは?
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【SDGs目標16】SDGsが目指す「平和と公正」な世界とその取り組みとは?

「平和と公正」というキーワードからは、小・中学校の頃の平和学習を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?筆者も平和と聞くと、小学生の頃に修学旅行で訪問した広島の原爆ドームを思い出します。(2020年10月16日更新)

執筆者:大野 翔平

今回の記事では、SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」(Goal 16 : Peace , justice and strong institutions)について取り上げます。

日本に住んでいると「平和と公正」を身近な社会問題と捉える機会は少ないかもしれませんが、視点を少し広く持ち、世界に目を向けてみるとどうでしょう?
世界中の多くの国では紛争・戦争による難民問題や貧富の差による無戸籍児の問題など、「平和と公正」に関する社会問題が今まさに起こっています。

本記事を通して世界の現状と具体的な取り組み・解決策を知ることが、「平和と公正」な世界を実現するために私たちができることを考えるきっかけになればと思います。
世界には今まさに戦争や紛争が起こっている地域が多数存在します。
そのような国や地域において、戦争・紛争・迫害により家を追われて難民となる人の数は、2018年には約7,080万人を記録しています。

難民の地位に関する1951年の条約(通称、難民条約)では、難民とは「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」と定義されています。
〔引用:UNHCR Japan 難民の地位に関する1951年の条約〕
特に近年では、シリア・アフガニスタン・ソマリアなど中東地域の紛争により国外に避難し難民となる人が100万人以上にのぼります。
さらに、この難民の多くが社会的に弱い立場である女性や子供たちです。紛争のある国や地域で暮らす子供たちは全世界で約2億5000万人いるというデータもあり、紛争が長期化・拡大することによりさらに難民が増加することも懸念されています。

難民となった人を受け入れる場所には、難民が集まって暮らす難民キャンプがあります。難民キャンプの規模は大小様々ですが、多くはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所:The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)などの国際団体が支援し、安全の確保、食料・飲料の確保などを行なっています。
国際団体が支援しているなら十分な支援が得られているかというと実はそうではありません。特に課題となっているのは、出生登録がされないことによる無戸籍児の問題です。

日本では出生登録が行われることは一般的で、子供が生まれると自治体に出生届を提出し出生登録をすることで戸籍に登録されます。日本国籍を持つことで、学校に通って適切な教育を受けられたり、病院で医療処置を受けられたりします。その他にも戸籍を持つことで受けられる公的サービスは多岐にわたります。子供が生まれたら出生登録を行い、健康で幸せに生活し、成長していくためのサービスを受けられることは、全世界で平等に認められる権利となっています。

しかし、難民となり他国へ逃れた場合、逃れた先の国籍を持てないことが多いのが現状です。また、難民キャンプで生まれた子供は出生登録自体ができず、無戸籍児となってしまうケースが少なくありません。難民という社会的に弱い立場であり、さらに戸籍を持たないことによって公的サービスを十分に受けられないことは、子供が健康に成長していく上での大きな障害となっています。
ここまで世界の現状と戸籍を持てないことによる「平和と公正」の問題について知ることができました。それとあわせて、SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」で示されている内容と、この目標の達成による描く未来も押さえておきましょう。

◾️SDGs目標 16
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

SDGs目標16では、紛争・暴力・虐待などの減少や、全ての人々が平等に利用できる司法環境の整備などが主な目標となっています。

目標16にはより具体化された指標として、16.1から16.bまで計12のターゲットが設定されています。本記事で取り上げている出生登録と身分証明についての記述はターゲット16.9に書かれています。

ターゲット16.9
2030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
外務省 SDGsサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16.4 2030 年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
16.8 グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.9 2030 年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16.a 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。
SDGs目標16に定められている紛争の回避や暴力・虐待の低減などは、影響範囲や課題の大きさから、特定の企業・団体だけでの解決が難しい問題でもあります。
それでも、難民となった子供を支援するなど間接的に支援を行うことは可能です。
UNHCRなどの難民支援を行なっている団体に対して、事業で得た利益の一部を募金する等の取り組みも実施されています。

ほかにも、キャノン株式会社やソニー株式会社では、難民映画祭において、難民問題への関心や理解を深めるための映像作成・上映を実施しています。映像作品を通して、なかなか当事者意識が湧きづらい問題を身近に感じてもらうための取り組みとなっています。
・キャノン株式会社の事例
https://www.japanforunhcr.org/archives/1489/
・ソニー株式会社
https://www.japanforunhcr.org/archives/1508/

また、出生登録や無戸籍児の問題にフォーカスを当てると、個人認証を戸籍ではなく電子的な仕組みで代替しようという取り組みもあります。
ID2020と呼ばれるこの取り組みは、AccentureやMicrosoftなどの企業が中心となり、ブロックチェーン技術と生体認証システムを組み合わせた個人認証の仕組みを構築しています。
一度書き込まれた情報は改竄しづらいというブロックチェーン技術と生体認証によって、戸籍を持てない難民でも個人の真正性を担保できます。

このように、企業であっても直接的な関わりが難しいSDGs目標16「平和と公正をすべての人に」の達成にむけて、私たちにできることは何があるのでしょう?

例えば、難民支援を行なっている団体への募金、日本において難民の受け入れや就労支援を行なっている組織・団体への協力、などが身近にできる取り組みです。
ほかにも、法整備や国際的な支援という観点から考えると、積極的に政治に関わり問題意識を持つ、世界の現状についてより深く知るなど、「平和と公正」の課題についてまず興味を持つという意識のレベルから変えていくことも一つの取り組みと言えるのではないでしょうか。

日本では、戸籍があり、教育や医療制度を受けられることが当たり前となっていますが、世界に目を向けると当たり前ではないことがわかります。なかなか身近に感じることが少ない問題ですが、本記事が「平和と公正」について考えるきっかけとなればと思います。

・国連UNHCR協会
・ユニセフ
・グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
・ID2020