エンジニアの視点から考えるSDGsとパートナーシップ
SDGsの1番目から16番目までの目標は「飢餓をゼロに」「ジェンダー平等を実現しよう」「気候変動に具体的な対策を」など、必要な取り組みが比較的絞られたものが中心となっています。
執筆者:大野 翔平
SDGsの1番目から16番目までの目標は「飢餓をゼロに」「ジェンダー平等を実現しよう」「気候変動に具体的な対策を」など、必要な取り組みが比較的絞られたものが中心となっています。
しかし、17番目の目標は「パートナーシップ」という抽象的な言葉で定義されており、具体的に何をすれば達成なのか?と疑問に思う方も多いと聞きます。
本記事では、そんなSDGs目標17について筆者のエンジニアという立ち位置から考えていきたいと思います。
エンジニアの方もそうでない方も、SDGsや持続可能な世界を作るために必要な取り組みについて少しだけ考えてみましょう。
SDGsの目標17は、パートナーシップに焦点を当てた目標で、19個ものターゲットで構成されています。
「持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」
SDGs最後の目標であり、それまでの全ての目標達成にも関わってくる影響度の高い目標となっています。
その理由は、SDGsの目標1から目標16を達成していくために、世界中の国や大学、企業などあらゆる人や組織が団結して取り組むことが必要不可欠なためです。
このような背景から、SDGs目標17で設定されている19のターゲットは7種類の実施手段に分類されており、それぞれの実施手段が目標1から目標16までの目標に関わってくる内容となっています。
SDGs目標17の実施手段
・資金
・技術
・キャパシティ・ビルディング
・貿易
・政策、制度的整合性
・マルチステークホルダー、パートナーシップ
・データ、モニタリング、説明責任
19のターゲットはそれぞれの実施手段に紐づいています。
例えば「資金」の実施手段には、先進国のODAコミットメントの実施や開発途上国のための追加的資金源の動員など、国レベルの資金援助についてのターゲットが含まれます。
「技術」の実施手段では、開発途上国に対する環境に配慮した技術の開発・移転・普及や、情報通信技術(ICT)の利用強化などにも言及されています。
このように、細かく読み込むと自分の仕事に関わる実施手段が少なからず見つかるのではないでしょうか?
ここからは、筆者が通信系のIT企業に勤めていることもあり、目標17の「技術」、その中でも特に情報通信に着目してパートナーシップについて考えていきます。
情報通信分野でのパートナーシップに焦点を当てると、電話やインターネットなどの普及は、世界中の人と人とを繋ぎコミュニケーションを円滑化するという点で「パートナーシップを強化するための技術発展」と言えるかもしれません。
一方で、インターネット等の情報通信を扱える人と扱えない人との格差も広げてしまうという課題を生み出しています。
人と人とがコミュニケーションを取る、目標17でも表題となっている「パートナーシップ」を強化するはずの技術が、新たな課題を生み出してしまったというのは残念なことです。
この情報格差は「デジタル・デバイド」とも呼ばれており、SDGsでは特に先進国と途上国との情報格差の是正について言及しています。
情報格差「デジタル・デバイド」は、インターネットなどを通じて情報を得られないことによる情報量の格差を指しており、この課題自体は実は身近にも存在する社会問題です。
日本国内の身近な範囲で考えると、年配の方などPCやスマートフォンといったデジタルデバイスを使いこなすことが難しい人と、主に若年層などのデジタルデバイスの利用に精通した人との格差についても「デジタル・デバイド」の課題として論じられています。例えば、高額なPC製品やサポートメニューを、デジタルデバイスについての知識が乏しい年配の方に対して売り付けていたといった事例も一時期話題になりました。
では、世界に目を向けるとどうでしょう?
世界のインターネット普及率は2000年には6.5%という低い数値でしたが、2015年には普及率が43.8%になり世界的にもインターネットが普及していることがわかります。
また、携帯電話の普及率は2000年には12.1%でしたが、2015年には98.6%となっておりインターネットよりも携帯電話等のモバイル端末の普及が大きく進んでいます。
先進国では新たな技術やサービスが登場しても、既存サービスや法制度との摩擦が生じるために、普及までに一定の期間を要することがありますが、途上国ではこのような制約が少ないため急速に新しいサービスが普及することも起こり得ます。このような例は「リープフロッグ(Leapfrog)型の発展」と呼ばれており、ケニアのモバイルバンキングやルワンダの医療分野でのドローン活用などがこれにあたります。
では、途上国における情報格差は完全になくなったのかと言うとそうではありません。
上記のように情報通信の技術は大きく発展していますが、継続的に情報格差を是正するための取り組みを続けている企業がいくつも存在します。
ここからは、情報格差を是正する取り組みをいくつか紹介します。
日本アイ・ビー・エム株式会社では、AI+IoT+ブロックチェーンなどの技術を活用することで、情報通信の普及だけでなくデジタルサービスを用いた教育やデータ活用にも貢献しています。
国や企業、学校が協力して情報格差を是正する取り組みを進めている点は、特に「パートナーシップ」に繋がるのではないでしょうか。
公益財団法人KDDI財団では、デジタル・デバイド解消プロジェクトとして開発途上国の人々とともに、情報通信技術を活用したパイロット・プロジェクトの企画・立案を多数行なっています。
通信網やクラウドサービスの導入支援だけでなく、導入後の保守・運用などについても支援を行なっています。
では、SDGs目標17「パートナーシップ」の実現に対して私たちができることはなんでしょう?
国や大きな組織のパートナーシップ強化に、私たちが貢献できることは少ないように感じるかもしれません。ですが、SDGs目標17のターゲットをよく読むと、自分の普段の取り組みや仕事がどこかで関わっていることがあるのではないでしょうか。自分一人で完結する仕事は少ないですので、大小の違いはあれど少なからずパートナーシップに関わって来るはずです。
そのため、パートナーシップの目標達成に対して私たちができることは、SDGsの取り組みを理解し、自分の仕事や行動がパートナーシップやその他の目標達成に繋がっていることを知ることから始められるのではないかと思います。
この記事をきっかけに、SDGsについてより理解を深めたいと感じていただけたら幸いです。
・国際開発センターSDGsハンドブックGOAL17
・グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
・総務省 平成29年版情報通信白書
・総務省 令和元年版情報通信白書
・IBM デジタルデバイドをテクノロジで解決
・KDDI デジタルデバイド解消プロジェクト