アフターコロナで変わる企業のSDGs戦略
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アフターコロナで変わる企業のSDGs戦略

それがいつになるのかは分かりません。しかし、近い将来世界全体が大きく変わることは確実でしょう。

執筆者:佐藤 加奈

世界は今、大きな変革期にあります。

コロナウイルスの流行がいつ収束するのか、様々な憶測が飛び交っています。
しかし、それよりも重要なのはアフターコロナ。コロナウイルスの流行が終息した後の社会がどう変わるのかです。

それがいつになるのかは分かりません。しかし、近い将来世界全体が大きく変わることは確実でしょう。
例えば、コロナウイルスが流行する前からもテレワークを推進する流れはありました。
ところが、社会全体の認識は「いつか、うちの会社もテレワークを導入するだろう」もしくは「テレワークができたらいいけれど、今は無理」だったように思います。

それがコロナウイルスの流行とともに「いつかできれば」が「今やらなければ」に変わりました。

この現象から感じることは、今、何をするかによってコロナウイルスの流行収束後、いわゆるアフターコロナで企業の生き残りの明暗がはっきりと分かれるであろうと言うことです。
また、世界規模で大きく変革を迎えるのならば、SDGsの達成のための戦略も大きく変わるでしょう。

もうすでに社会の変革を感じ取っている方も多いかもしれません。
コロナウイルスの流行を経験したことで、身近で大きく変化しているものがあります。
それは「リモート化」でしょう。

多くの企業ではテレワークや在宅ワークが急速に進められており、多くの人は通勤にかかる時間や金額などに思っていたよりコストがかかっていたことに気付きました。
テレワーク、在宅ワーク特有のストレスや悩みも同時に生じてはいるものの、出社せずとも仕事が出来ることを知りました。

もちろん、全ての事業がリモート化出来るわけではありません。
しかし、今後、リモートを前提とした社会の仕組みが構築されていくことは確実でしょう。

それだけではありません。出社せずとも仕事ができるのであれば、人の暮らしが首都圏や都市に集中する必要はなくなります。そうなれば、オフィスの在り方も変わるでしょう。
すでにZoomやSkypeなどのビデオ電話を利用し、オンラインでミーティングする機会が増え、サテライトオフィスも注目を集めています。

医療や教育の現場においてもオンライン診療、オンライン教育が進められており、これらの動きはコロナウイルス流行の間の一時的なものではなく、今後も様々な分野でオンラインサービスを提供する動きは広がっていきます。
先に挙げたZoomやSkypeなどのビデオ電話や、Chatwork、Slack、Teamsなどのチャットツールなどの利用も飛躍的に広がり、仕事だけではなく、オンライン婚活などの出会いの場もつくられるようになりました。

オンラインフィットネスも今後需要が伸びていくと考えられ、(株)コネクティ社によってオンラインでコーチを行うインストラクターとユーザーのマッチングサービス
comeet(コミート)http://comeet.jp 」等もリリースされました。

そのベースとして存在するのはデジタル・トランスフォーメーション(DX:Digital Tranceformation)だと考えられます。
DXとは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念であり、「ITが社会のあらゆる領域に浸透することによってもたらされる変革」のことです。

ここでいう変革とは、既存のものが変化する程度のものではなく、既存のテクノロジー、サービスが覆されるような大きな大きな変化のことです。
アフターコロナでは世界全体の在り方は大きく変わるでしょう。

では、社会全体の変革がSDGs達成にどのように影響するのでしょうか?
また、企業が生き残るために、SDGs達成の戦略をどのように考えていくべきなのでしょうか?

上述の繰り返しになりますが、アフターコロナの世界は社会全体の在り方が大きく変わります。
そうなれば、SDGs達成のための動きも従来どおりにはいかないかもしれません。

社会の変化に応じて、柔軟に適応しながらSDGsの達成にアプローチしていく必要があります。

SDGs3「すべての人に健康と福祉を」

身近で大きな変化といえば、やはり「リモート化」でしょう。
医療の現場では実際にオンライン診療が行われています。

ビデオ通話などで診察が行われ、必要に応じて薬の郵送も可能となる場合があります。
現時点では対面での診察が前提のため、オンライン診療はあくまで補助的な立ち位置ではありますが、今後、VRやAIなどの普及によって、オンライン上の診察で正確に患者の病態把握ができる可能性もあります。

もちろん、法律や倫理的な壁を乗り越える必要はありますが、医師と患者が離れたところにいても病気の診断、薬の処方などが出来れば通院が難しい場合でも適切な医療サービスを受けられるようになるでしょう。
また、世界の最新の医療が浸透しにくい国においても一律に医療サービスの提供、現地の人々への指導が出来るようになります。


エストニアでは生活の様々な場面でデジタル化が進んでいます。全国民にIDが発行され、そのIDが診察券や処方箋の代わりになっており、他にもネットバンキングや行政にかかる手続きなどのサービスがオンライン上で可能となっています。

このIDは日本で言うところのマイナンバーにあたり、この仕組が日本でも実現化しオンライン上で医療サービスを受けることが出来るようになれば、どこへ行ってもかかりつけ医に相談できるため、適切な医療を受けられるようになるでしょう。
それは同時に地域による医療格差を解消する鍵となるかもしれません。

SDGs8「働きがいも経済成長も」

今後、テレワークによる業務が拡大していけば通勤にかかるコストがなくなります。

会社へ行かずとも仕事が出来るのであれば、オフィスの在り方も変わるというのは序章でも述べました。
同時にオフィスを構えることが大きな負債となる可能性も出てきました。
つまり、アフターコロナに向けて企業が生き残るために考えるべきはリモート化を前提とした労働環境をつくることだと考えられます。

これらの社会変化により、人の動きも緩やかに減衰していけば渋滞による空気汚染等も減少し地球環境にとっては有利に働きます。

こうした動きの中で、所有から利用への価値感の移行が更に推進されオフィスシェアリングや、MaaS(モビリティ アズ ア サービス)と言った、シェアライド等も更に進行していくでしょう。
自動車産業と中心にこれらの社会ニーズの変化への対応は必須となっています。

コロナを機に、「uber Health」や「Grab Care」と言った医療従事社向けのシェアライドサービス提供など、従来のビジネスシーン以外の活用に各社乗り出している事も注目できます。
こうした社会全体の変革の根底にあるのはDXです。クラウドやAI、ロボティクスなどのテクノロジーがそれらを支えています。

コロナがいつ再燃するか分からない中で、稼動を止められない物流や工場等の業務は更にロボットへの代替が進むでしょう。
異業種からの参入も盛んな分野で、三井不動産等が全く人が稼動しない物流倉庫を新事業として進出しています。

テクノロジーの価値を正しく理解し、活用できる人材が重要となるため、企業や自治体、国家もまたテクノロジーを柔軟に受け入れ、活用していく必要があるでしょう。
今回の経験を機会にオンライン授業等の整備は各国より進み、教育の格差の減少に図らずとも貢献する事になりました。
今後も国家や各自治体の単位でも、戦略としてオンラインを前提とした従来の常識からの移行は進んでいくでしょう。


また最近は、フレックス勤務を推奨している企業も多く、それにより労働の多様性も生まれています。
結果として、少ない労働時間でも一定の業績を維持することが可能になってきました。
そうなれば、これからは確実に「副業」が増えると考えられます。

それぞれがやってみたいと思った仕事、チャレンジしてみたい分野に手を伸ばしやすくなり、労働が生きるための手段だったところから、自己表現のための手段に変わります。
さらにチャットツールやテレビ電話の浸透によって、オンライン上で人と人が繋がることができるようになりました。

この事実は業種、業態、地域を超えて多くの人と繋がることが出来る可能性の証明にほかならず、新しいサービスやビジネスが生まれる可能性も秘めています。

今求められている力は、自分がやりたいことは何か、それぞれの理想の状態は何かという、個人がビジョンを描く力です。
企業はそれを支援する環境や文化を築くことが重要となるでしょう。

人類は確実にコロナウイルスの流行という大きな壁を乗り越えます。それは今までペスト菌やSARSなどの感染症の流行を乗り越えてきた歴史が証明しています。
アフターコロナがいつやってくるのか、アフターコロナの社会はどのような姿なのか、不確実なことはたくさんあるでしょう。

しかし、アフターコロナに向けて社会は世界規模で変革を迎えようとしているのは確実です。
すでに在り方を変えた企業もあるかもしれません。

全ての根底にあるのはDXであると考えられます。
テクノロジーを効果的に取り入れ、活用できる企業が社会の変革に適応できる企業です。
そのような企業がひいてはSDGsの達成に大きな貢献をもたらすでしょう。

現在、コロナウイルスの流行により、様々な経済活動に制約が設けられています。
このような状況だからこそ、近い未来を予想しどのような準備をするかによってアフターコロナを迎えた時に明暗が分かれると言っても過言ではありません。

・アフター・コロナのSI戦略 | ネットコマース株式会社
https://www.netcommerce.co.jp/blog/2020/04/19/15358

・アフターコロナ時代のビジネス戦略:不可逆なアフターコロナ時代の視座"4つのY" | D4DR(ディーフォーディーアール)株式会社
https://www.d4dr.jp/topics/fprc/aftercorona/01