三菱ケミカルグループ
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三菱ケミカルグループのサーキュラーエコノミーの取り組み サステナブルなリサイクルシステム構築の展望

日本の化学メーカー最大手である三菱ケミカルグループは、廃棄物という概念のない循環型社会・サーキュラーエコノミーを推進するための取り組みを10年以上前から行っています。。本レターでは当社が取り組んでいる様々な素材のリサイクルの中から、いくつかの事例をご紹介します。 #三菱ケミカル #SDGs

アクリル樹脂のリサイクルの取り組み
 使用済みのアクリル樹脂製品を回収し、従来品のアクリル樹脂と同等の品質を持つリサイクル品をつくるケミカルリサイクル技術の開発を行っています。2021年6月には実証実験のためのリサイクル設備を建設しました。実証実験の概要や今後の展望についてご紹介します。
アフターコロナで大量に廃棄されることが予想されるアクリル樹脂製の飛沫感染防止用パネル。社会からのリサイクル要請がますます高まっているアクリル樹脂について、当社グループではケミカルリサイクル事業化に向けて様々な実証実験を進めています。

ENEOSと共同で行うプラスチック油化の取り組み
 茨城事業所において、ENEOS株式会社とともにプラスチック油化共同事業を開始します。現在建設中の国内最大規模のリサイクル設備で廃プラスチック問題に取り組みます。

炭素繊維のリサイクル事業への本格参入
 自動車を含むモビリティ全般の軽量化にも貢献している炭素繊維。炭素繊維製品の製造、回収、リサイクルまで一貫して実施できるビジネスモデルを日本と欧州で展開し、さらにはリサイクル炭素繊維の用途開発も含めて活動しています。

アクリル樹脂のリサイクルの取り組み

◆利便性の高いアクリル樹脂・ケミカルリサイクルの可能性
 アクリル樹脂は優れた透明性・耐候性を持つプラスチックで、自動車のテールランプ、看板、水族館の水槽、塗料、建材などに幅広く用いられており、その世界需要は240万トン程です。当社グループは世界各地に製造拠点を持つ、アクリル樹脂のグローバルトップメーカーで、リサイクルに関しても先駆けた研究開発を行っています。
世界中でカーボンニュートラル実現に向けた動きが活発になる中、二酸化炭素排出量が少ないサステナブルな素材が求められています。当社グループでは不要となったアクリル樹脂を回収し、再利用を行うケミカルリサイクルの可能性を探るため研究開発を進めています。
※アクリル樹脂のケミカルリサイクル:使用済みアクリル樹脂を加熱などにより分解し、精製することで、再び原料であるMMA(メチルメタクリレート)に戻し再利用すること。

日本におけるアクリル樹脂のケミカルリサイクルと回収システムのイメージ

2021年6月にはアクリル樹脂のリサイクル技術検討のパートナーであるマイクロ波化学株式会社と協力し、同社大阪事業所内に新たな実証設備を建設しました。さらに、日系大手の自動車メーカーである本田技研工業株式会社と協力して実証実験を行っています。廃車からアクリル樹脂製のテールランプなどを回収し、マイクロ波で熱分解・精製して原料に戻します。それを再利用してアクリル樹脂を作り、再びテールランプ用の材料として問題なく使用できるかを検証しています。現在、ケミカルリサイクル技術により製造されたアクリル樹脂は、透明性をはじめ従来品と同水準の性能を保つことが確認できています。

 また、ケミカルリサイクル品の製造工程における二酸化炭素排出量は、従来品よりも70%程削減できると見込んでいます。アクリル樹脂の廃棄量を減らすことができるだけでなく、製造時の二酸化炭素排出量を削減し、環境負荷低減に大いに貢献する技術です。

同社グループでは、過去にも自社で発生するアクリル樹脂の端材をリサイクルする研究開発を行っていましたが、コストなどの理由で中断していました。しかし、近年の環境配慮型素材への関心の高まりや、飛沫防止用パネルの大量廃棄を見据え、アクリル樹脂のリサイクル技術の確立は社会からも強く求められるようになり、リサイクル技術の研究開発を再開させました。

 実際に、自動車メーカーや電機メーカーからも、二酸化炭素の排出量を大幅に削減することができるリサイクル素材を求める声が増加していることに加えて、廃棄物を取り扱う事業者からも回収品のリサイクルに関する問い合わせが増えています。将来的には、現在、実証実験を進めている自動車部品だけではなく、飛沫感染防止用パネルや化粧品容器など、使用済みのアクリル樹脂製品を幅広く回収し、リサイクルを行うオープン型のビジネスモデル構築を目指して取り組んでいます。

アクリル樹脂は生活の様々なシーンで使われている(左:飲食店の飛沫防止用パネル、右:看板)


マイクロ波化学社と共同で開発したマイクロ波をつかった分解技術がアクリル樹脂を効率的にリサイクルするためのブレイクスルーとなりました。これは電子レンジと同じ仕組みで、アクリル樹脂が吸収する波長のマイクロ波を使用することで、効率よく熱分解させることが可能となります。従来の方法よりもリサイクル時のCO2排出量が押さえられるため、今後主流となっていくことが期待されています。
マイクロ波を用いたアクリル樹脂のケミカルリサイクルは世界初の技術です。

 他社に先駆けていち早くアクリル樹脂のリサイクルに着目してきた当社グループは、現在実施中の実証実験を経て、本格的にアクリル樹脂のケミカルリサイクル事業に参入してまいります。日本だけではなく、イギリスでも研究を進めており、グローバルにサーキュラーエコノミー実現に向けた取り組みを加速させています。

国内最大規模のプラスチックケミカルリサイクル設備を建設

 当社グループはENEOS株式会社と共同で2021年より、プラスチック油化(※)事業開始に向けた取り組みを進めています。本事業では、回収した廃プラスチックを化学的に液化し、再度原料として使用することを目指しています。複数種類のプラスチックが混ざった状態でもリサイクルすることができ、新品同等の品質のリサイクル品を得ることができます。
現在、商業ベースでは国内最大規模となる年間2万トンの処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設中で、2023年度中に廃プラスチックの油化を開始する予定です。廃プラスチック問題は世界的課題となっており、プラスチックを製造する事業者として循環型社会形成に貢献してまいります。
※廃プラスチックを熱分解して生成油を製造するケミカルリサイクルの手法

これまで難しかった炭素繊維のリサイクルを実現、新たな切り口でサーキュラーエコノミーを目指す
 カーボンニュートラルの実現に向け、ガソリン車から電気自動車へのシフトが加速する中、重いバッテリーを搭載する電気自動車が走行距離を延ばすには、ガソリン車以上に車体の軽量化が必須とされています。そこで、鉄より強く、アルミよりも軽い炭素繊維に注目が集まり、自動車部品への採用が増加しています。

 当社グループではサステナビリティにも配慮した炭素繊維のサプライチェーン確立が不可欠であると考え、炭素繊維のリサイクル事業にも力を入れています。日本でのリサイクル設備導入に加え、欧州ではリサイクル事業を行う企業を買収することで、取り組みを加速させています。炭素繊維の原料の製造からリサイクルまでのチェーンを確立するとともに、リサイクルした製品を再度原料として当社グループで利用することにより、顧客に対して製品のリサイクルも含めたトータルソリューションを提案しています。

 炭素繊維は自動車以外に、スポーツ分野でも活躍しています。例えば、ウインドサーフィンで使用される道具(マストやボード)にも炭素繊維が使われています。当社グループと日本ウインドサーフィン協会が協力して、使用中に損傷してしまった部材を回収し、リサイクルする取り組みも始まっています。



ウインドサーフィンで使われる道具をリサイクルする取り組みも始まっている

リサイクル炭素繊維を使用した航空機内装部材をBoeing社と共同開発中

国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標 7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
7.1 2030 年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
7.a 2030 年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
7.b 2030 年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。