絶滅疑惑の地元の牡蠣クマモト・オイスターを学ぶ【海のインフルエンサーになろう】を開催しました!
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絶滅疑惑の地元の牡蠣クマモト・オイスターを学ぶ【海のインフルエンサーになろう】を開催しました!

一般社団法人「くまもと海のミライ」は、かつて絶滅と思われた「クマモト・オイスター」を学ぶ子供向けの動画イベントを開催。この活動は、“日本財団「海と日本プロジェクト」”の取り組みの一環で、美しい海を次世代に伝える目的があります。

・開催概要
子ども達がインフルエンサーとして海の動画を制作・発信し、「くまもと海チャンネル」として熊本朝日放送YouTubeにアップします。学校で学んだiPadの使い方を駆使して、さらにプロのインフルエンサーやディレクターからサポートを得ることで、子ども達だからこそ作れる海の動画を制作します。

動画のテーマは「クマモト・オイスター」。国内では、主に八代海・有明海に生息する「シカメガキ」は、アメリカでは高級食材「クマモト・オイスター」として愛されてきました。熊本では絶滅した品種だと考えられていましたが、DNA分析によって再発見され、ブランド化に向け養殖が開始されました。

しかし、局在するため環境省と熊本県のレッドリストでは準絶滅危惧種に分類されています。

クマモト・オイスターが育つ海の未来を守ることが、クマモト・オイスターを守ることにも繋がる。そのために何ができるのか、子ども達が自分事として考え、実行したことを動画発信するイベントです。

・日程
2023年7月25日(火)26日(水) 一泊二日

・開催場所
熊本県水産センター(上天草市大矢野町中2450‐2)
養殖場「恵比須丸」(天草市有明町)
天草青年の家(上天草市松島町合津5500)
Lit天草(天草市有明町大浦1542-1)

・参加人数
小学5・6年生21人

・協力団体
熊本県水産センター、恵比須丸、Lit天草、合同会社Evoliv



クマモト・オイスターの研究を行う清田 純平研究主任にお話をききました。

まずは、クマモト・オイスターの歴史や特徴を学びます。

熊本原産の「シカメガキ」がアメリカで高級食材「クマモト・オイスター」と呼ばれていて、国内では主に、八代海・有明海に自生している地牡蠣です。

戦後、アメリカから種牡蠣の輸出を求められた日本でしたが、広島県、宮城県が対応出来なかったため熊本から輸出することになりました。すると、アメリカ人の「カキは生ですべてを一口で食べるのが一番美味しい」という文化にヒットし大人気に!子ども達は戦後に馬が牡蠣を運ぶ写真など、貴重な写真を見ながらクマモト・オイスターのことを学びました。

しかし、アメリカで稚貝が生産されるようになり、日本から種牡蠣を輸入する必要がなくなったことから、アメリカへの輸出は終了。熊本で漁業生産の主体がクマモト・オイスターの生産からノリ養殖に移ったため、クマモト・オイスターの種牡蠣生産が途絶え、絶滅したのではないかと考えられていました。

しかし日本で、いろいろな種類や産地の牡蠣を生で食べるオイスターバーが大流行。世界的に「Kumamoto Oyster」がブランドとして認知される中、熊本県ではシカメガキが生産されていないことが悔やまれたため、2005年から復活に向けた動きがスタートしました。県内海域をくまなく探した結果、DNA分析によって八代市鏡町地先に生息していることが確認されました。

今は環境省と熊本県のレッドリストでは準絶滅危惧に分類され、大切に育てられていることを学びました。

クマモト・オイスターについて今回初めて知った子が多かったのですが、アメリカで「KUMAMOTO」という名前で人気なことに驚いている様子でした。子ども達はしっかりとメモをとりながら話をきき、当時の写真を食い入るように見ていました。

クマモト・オイスターが生息する八代海・有明海はたくさんの河川から栄養豊富な水が流れ込むため、クマモト・オイスターのエサとなるプランクトンが豊富なことを学びました。

まずは、クマモト・オイスターの実物を見学。普段見る牡蠣よりも小さいことに驚いていました。続いて、牡蠣のエサ「プランクトン」とはどういうものなのかを見学。この茶色い水のようなものの中にプランクトンがたっぷり入っているんです。子ども達はプランクトンがこんなにも大量に養殖されていることに驚いていました。

続いて、クマモト・オイスターの子どもがどういう場所で生育しているのかを見学。とても面白いものを見せてもらったのですが、極秘技術につき詳細は控えます…。なかなか見せられない部分まで子ども達を入れてくださって、熊本県水産研究センターの皆さんに感謝です。

最後に、クマモト・オイスターの卵と子どもを顕微鏡で観察。卵を目の前でお母さんから取り出す様子を見て、子ども達は目を輝かせていました。牡蠣は卵から生まれるということにも驚いていました。クマモト・オイスターの子どもは、まだ1mmほどのサイズ。「赤ちゃんは砂のように小さいのにちゃんと貝の形をしています。濃縮したプランクトンを与えていましたが、貝が動いていて食べているのがちゃんとわかり驚きました」と感想を寄せてくれて、生命の神秘に触れたようです。

 

子ども達は、クマモト・オイスターを育てるうえで、水温が上がる夏場に産卵した後ほとんどのクマモト・オイスターが死んでしまい、商品として十分なサイズに育たないという課題がありましたが、熊本県水産研究センターでは「温度による刺激を与える」ことで夏場にクマモト・オイスターが死ぬ確率を大きく下げたという研究成果も学びました。



クマモト・オイスターの生産者「恵比須丸」の原田さんにお話を伺いました。

班ごとに船に乗って、牡蠣の養殖現場へ。クマモト・オイスターの子どもを一定量ずつネットに入れ、海に入れる体験をしました。クマモト・オイスターの成長に応じてネットに入れる個数を変え、育ちやすい環境を作っていることを体感し「餌の量も、多すぎるのもダメでちゃんと工夫しているそうです。入れれば入れるほど育ちそうなのに、意外と少なく入れないと食べられない個体が出てくるそうで勉強になりました。」と学んだことを報告してくれました。

つづいて、牡蠣磨き体験。海の中で育つ牡蠣には、他の貝や海藻などが付着します。それらを定期的に取り除くのも養殖の仕事の1つ。子ども達も牡蠣磨きを体験し、削っていい場所、削ると成長や商品価値に影響がある場所などを考えながら作業しました。難しいかな?と思っていたのですが意外とみんな几帳面に丁寧に牡蠣磨きをしていました。ただ、「貝の表面の取り残しがあったり、逆に取ってはいけない部分があったり、削るのはテクニックが必要で難しいと思ったし、漁師の方はすごいなと思いました。削りすぎると死んでしまうそうです。」「やめ時が分からなかった」など、いろいろなことを考えながら取り組んでくれていたようです。

最後に生産者の原田さん、熊本県水産研究センターの清田研究主任から「熊本の海の未来を考える」ということでお話を伺いました。クマモト・オイスターは、主に八代海・有明海に局在しているため、海の環境が破壊すると消滅の可能性があるという話をきき、子ども達は真剣な表情で話をききました。海の環境とは、何か1つのきっかけがあるわけではなく、もしかしたら何かが変わってもクマモト・オイスターは生存しているかもしれないし、逆に何かが1つでも変わると絶滅してしまうかもしれない、どこでバランスが保たれているのか分からないから、今の環境を守っていくことが重要なのだと学びました。話のなかでは、赤潮問題や地球温暖化、磯焼けなど様々な海の問題が取り上げられ、子ども達も自分で何ができるのかを一生懸命考えました。子ども達は自分の意見を発表し「今の海を守っていきたい」「みんなにクマモト・オイスターを知ってもらうことを通して海を大切にしてもらいたい」などの意見がでました。

海の未来を守ることは、クマモト・オイスターの未来を守ることにも繋がる。そのことをしっかりと学べたようです。



Lit 天草のご協力のもと、牡蠣をはじめとした海鮮をバーベキューでいただきました。

クマモト・オイスターは春が旬のため、夏が旬の岩ガキを実食。この岩ガキは前日にみんなで磨いた牡蠣です。牡蠣が好きな子は、手際よく牡蠣を焼き、殻を開け、おいしそうに頬張っていました。意外なことに初めて牡蠣を食べる子が多く、周りの様子を見ながら恐る恐る食べていましたが、海の濃厚なうまみを感じて、感動していました。「牡蠣っておいしいんだね」「自分で磨いたから食べてみた」と思い思いの感想を口にしていました。

インフルエンサーの「竜さん」とフリーディレクターの「本田さん」に教えてもらいながら、動画編集に取り組みました。普段の授業でも動画編集をよくするという子ども達。教える前から手際よく編集をはじめていました。ですが、その上を行くプロのインフルエンサー竜さんと本田ディレクター。どうすると、楽しく分かりやすく最後まで見てもらえるのかを考え、それを映像化する技を学びました。

内容はもちろんクマモト・オイスターのこと。2日間で学んだことをぎゅっと詰め込みます。どう伝えたらクマモト・オイスターの魅力が伝わり好きになってもらえるのか、海を守るというアクションを引き出せるのかを意識して各班が自分の担当内容を編集。編集というアウトプットをすることで、ますますクマモト・オイスターへの理解が深まり愛着をもった子ども達でした。

子ども達が作った動画は、「くまもと海チャンネル」として熊本朝日放送の公式YouTubeや海と日本プロジェクトinくまもとの公式X「【公式】ひごんアマビー (海と日本プロジェクトinくまもと)」で8月末に公開予定。ぜひご覧くださいね。

【参加した子ども】

●本物の養殖場が見られてすごかった。磨き体験は楽しかった。こんなに苦労してんだなぁと実感した。

●海にはたくさんの生き物がいて、その生き物を守っていかないといけないことが分かりました。

●牡蠣磨きは見ているだけだったら「楽しそうだな~」という浅はかな考えしかなかったけど、実際にやってみると思わぬところを削ってしまって、とても大変だった。

【保護者】

●普段、体験できない牡蠣磨きなど、子ども達にとっては貴重な経験だと思いました。何より、仲間と協力して発表し、他者に伝える事は将来役に立つと思います。有り難い体験をさせていただいたと思います。

●今回の企画は学校や個人での体験は難しく、本物に触れて・体験して学べることは滅多にないです。またイベントの参加期間中だけでなく、これからも海・自然・環境などについて考えるきっかけを頂けて、子ども達にとって素晴らしい体験をさせて頂きました。将来の夢の視野が広がった子もいると思います。よい機会をありがとうございました。

<団体概要>

団体名称:一般社団法人 くまもと海のミライ

URL:https://kumamoto.uminohi.jp/

活動内容:熊本県は、有明海・八代海・東シナ海の3つの海に面し、海の恵みが豊かな地域。ダイビングが楽しめる海中公園や、家族で楽しめる海水浴場、日本一の干潟もあり、各地で海のレジャーを楽しむことができます。「海と日本プロジェクトinくまもと」では、そんな熊本県の海の魅力を伝え、海と共生するムーブメントを起こすことを目的に活動しています。

日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。

https://uminohi.jp/



外務省 SDGsサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標14 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
14.1 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.3 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し対処する。
14.4 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.5 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
14.6 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する**。 **現在進行中の世界貿易機関(WTO)交渉およびWTOドーハ開発アジェンダ、ならびに香港閣僚宣言のマンデートを考慮。
14.7 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.a 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
14.b 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
14.c 「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。