車の燃費、建築、生ゴミ処理まで:パイオニア、AGC、マクニカの環境イノベーション
パイオニア、AGC、マクニカの環境テクノロジーを取材。車の燃費、建築ガラス、生ごみ処理など、生活に密着したテーマで持続可能性を追求する企業を紹介。脱炭素経営EXPO【秋】レポート第三弾!
2023年9月13日から15日にかけて開催された「脱炭素経営EXPO【秋】」。この展示会では、パイオニア株式会社(以下、パイオニア)、AGC株式会社(以下、AGC)、株式会社マクニカ(以下、マクニカ)といった各企業の先進的なテクノロジーと持続可能なビジネスモデルについて深く探る機会を得ました。
本記事では、これらの企業がどのように環境、エネルギー効率、持続可能性に貢献しているのか、インタビューを通してご紹介します。
昨今、エネルギー効率と環境保全は建築トレンドにおいて重要なテーマです。特に窓ガラスは夏の暑さや冬の寒さをコントロールするためのキーアイテムになっています。今回は、この問題の解決策を提供するAGCの「Low-Eガラス」に焦点を当て、お話を伺いました。
――「Low-E複層ガラス」とは、どのようなガラスなのでしょうか?
Low-E複層ガラスは、通常のガラスに特殊な金属膜を蒸着したものです。この金属膜が太陽からの日射熱を遠赤外線として反射する能力を持っています。この反射効果によって、窓ガラスが遮熱性能を持つようになります。また、複層構造にすることで空気層が生成され、これが断熱効果をもたらします。結果として、夏は冷房、冬は暖房の効率が向上し、エネルギー消費を抑制することが可能です。
(実際に筆者が、展示された「Low-E体感器」で遮熱と断熱効果を体験。通常のガラスに比べてかなり涼しく感じました。)
――このガラスはどのような施設で主に使われていますか?
Low-E複層ガラスは現在、新築の住宅やビル、マンションで広く採用されています。一般の新築住宅でも大半がこのタイプのガラスを使用していると言っても過言ではありません。
――すでに新築では広く採用されているようですが、既存の建物にはどうでしょうか?
従来、既存の建物で複層ガラスに変更する場合は、窓枠を外す必要があり、大掛かりな工事が必要でした。今回展示している弊社の現場施工型後付けLow-Eガラス「アトッチ」は、既存のガラスをそのまま利用して室内側からLow-Eガラスを後付けで貼る工法です。そのため、足場を組んだりする必要もなく工期も大幅に短縮できます。
――本日は、ありがとうございました。
――「Piomatix for Green」について、その特性や機能について教えてください。
「Piomatix」は元々、車載器から得られるデータを集めてAIで解析するプラットフォームです。そのテクノロジーを皆さんにオープンにして解放したのが、「Piomatix」。更にその中の脱炭素やCO2排出量という部分に特化したのが「Piomatix for Green」です。「Piomatix for Green」では、車のCO2排出量や燃費、電力消費量などを算出することができます。
――この製品は一般市場に出ているのですか?
まだ市販はされていません。今は主に実験的なアプリでその機能を示しています。しかし、この技術は既にいくつかの企業や研究機関で採用・検証されている状況です。
――この技術はどのような企業や業界で活用されていますか?
例えば、国際航業やNextDriveなど、地図データを提供する企業が我々の「Piomatix」を活用しています。
――カーナビや車そのものにこの技術は組み込まれるのでしょうか?
カーナビに直接組み込む予定は現時点ではありませんが、将来的な可能性は否定できません。特にEVが普及する中で、充電スポットを効率的に見つけるなどの新しいニーズに応えられるサービスが求められています。
――EVについては、どのような課題がありますか?
EVはエコフレンドリーと言われますが、実際には充電インフラが不十分で、バッテリーの持続性も不確かです。このような課題も我々の技術で解決できる可能性があります。
――一般ユーザーはこの「Piomatix for Green」に触れることはできるのでしょうか?
現時点では、一般ユーザーが直接このデータに触れることはありません。しかし、将来的には、我々がこのプラットフォームを使って新しいサービスを開発する可能性があります。
――最後に、この技術の将来像について教えてください。
我々の技術はオープンにされており、多くの企業や研究機関で活用されています。この「Piomatix for Green」も、環境問題への対応や持続可能な社会を目指す一環として、今後さまざまなサービスやアプリケーションで使われると期待しています。
――本日は、ありがとうございました。
食品廃棄物や生ごみの処理は、個人から企業、公共施設まで、社会全体での大きな課題となっています。その解決策として注目されているのが、マクニカが提供する生ごみ処理機「イーキューブ」です。この装置は、特定の微生物とのシンビオーシス(共生)によって、生ごみを水溶性の物質に変換し、さらにはそれを安全に下水や浄化槽に排出することができます。処理能力は最小10㎏から最大750㎏までと、多種多様なニーズに対応可能。今回は、この「イーキューブ」がどのような技術を用い、どのような影響を環境や社会に与えるのか、詳しくお話を伺いました。
――「イーキューブ」の特徴について教えてください。
イーキューブは、微生物の力によって生ごみや調理前の残渣(※1)を水に変える、減容率100%完全完結型の生ごみ処理機です。咀嚼できるもの(穀類、畜産物、魚介類の可食部分、野菜、果物、加工食品など)は処理することができます。繊維質が多いトウモロコシの皮などは少し難しいですが、そのような場合は追加の「バイオチャフ」菌床を用いれば問題ありません。マグロ・豚・牛などの太い骨やサトウキビなどは処理が難しいです。
※1:人間が咀嚼し消化できる食べ物、残飯、野菜の切り落とし、魚のさばき残渣など
――処理後はどうなるのでしょう?
生ごみの処理後は水になるため、残存物の処理が不要です。処理後の水は、本体から出るパイプによって浄化槽や下水に排出されます。
――ランニングコストについて教えてください。
生ごみの処理後は水になるため残存物の処理が不要で、ランニングコストは安価に済ませることができます。バイオチャフを約3ヶ月ごとに追加する必要はありますが、バイオチャフの価格はそれほど高くないのでランニングコストとしては非常にリーズナブルです。
――処理量が10㎏から750㎏までと多岐に渡りますが、各モデルに違いはありますか?
処理量に応じて様々なモデルがありますが、基本的な性能は変わりません。展示しているものは一番小さい10㎏対応のモデルです。
――すでに導入された施設や事例については?
ショッピングモール、飲食店、病院、保育施設、企業の社員食堂など、生ごみが発生する多くの場所で導入されています。処理量10~750㎏の13種類をラインアップがあるので、お客様の排出量に応じて様々なサイズで導入いただいています。
――本日は、ありがとうございました。
今回のインタビューシリーズでは、テクノロジーが日常生活やビジネス、さらには環境に与える影響について深く探る機会を得ました。
パイオニアの「Piomatix for Green」は車の燃費や電力消費を効率化するプラットフォームとして、持続可能な移動手段への移行を促進。AGCの「Low-E複層ガラス」は、遮熱と断熱性能を備えた革新的なガラス技術で、エネルギー効率の高い建築物を実現。最後に、マクニカの「イーキューブ」は、生ごみ処理という日々の生活問題に対する効率的かつ環境に優しい解決策を提供しています。
これらのテクノロジーは、それぞれ独自の問題解決手段を提供するだけでなく、環境への影響を最小限に抑える努力も行っています。これからの時代、持続可能性がますます重要なテーマとなる中で、このような先進的な製品やサービスは無視できない存在と言えるでしょう。
各社の取り組みを通じて明らかになったのは、テクノロジーが単に「便利」を追求するだけでなく、「持続可能」で「環境に優しい」世界を形作る重要な要素であるという点です。これらの企業が推進するテクノロジーは、私たちの未来においてどのような変化や進化をもたらすのか、引き続き注視していく価値があるでしょう。
他にも、脱炭素経営EXPO【秋】に関するレポートを公開していますので、ぜひご覧ください。
国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。
目標 7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
7.1 2030 年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 7.a 2030 年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。 7.b 2030 年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。