ADRAS-J
PROSPERITY

アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」、デブリから数百kmの距離にまで接近

株式会社アストロスケールはこの度、日本時間2月18日深夜に打ち上げられた商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」のミッションにおいて、デブリとの距離を数百kmにまで詰め、ここからさらに距離を縮める近傍接近を開始しました。

持続可能な宇宙環境を目指し、スペースデブリ(宇宙ごみ、以下、デブリ)除去を含む軌道上サービスに取り組む株式会社アストロスケールホールディングス(本社:東京都墨田区、創業者兼 CEO 岡田光信)の子会社で人工衛星システムの製造・開発・運用を担う株式会社アストロスケール(本社:東京都墨田区、代表取締役社長 加藤英毅)はこの度、日本時間2月18日深夜に打ち上げられた商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ、Active Debris Removal by Astroscale-Japan の略)」のミッションにおいて、デブリとの距離を数百kmにまで詰め、ここからさらに距離を縮める近傍接近を開始しました。



運用を終了した衛星等のデブリは非協力物体※1 であり、外形や寸法などの情報が限られるほか、位置データの提供や姿勢制御などの協力が得られません。よって、その劣化状況や回転レートなど、軌道上での状態を把握しつつ当該デブリに安全・確実にRPO※2 (ランデブ・近傍運用)を実施することは、デブリ除去を含む軌道上サービスを提供するための基盤となります。ADRAS-Jは実際のデブリへの安全な接近を行い、デブリの状況を明確に調査する世界初※3 の試みです。具体的には、大型デブリ(日本のロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)への接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行います。

2月22日より開始した接近の運用では、軌道投入時にはデブリと異なる軌道にあった衛星を、 GPSと地上からの観測値という絶対的な情報を用いて(絶対航法)デブリと同じ軌道へと調節し、デブリの後方数百kmにまで接近させました。そしてこの度、ADRAS-J搭載のVisCam(可視光カメラ)にてデブリを捕捉したことで、衛星搭載センサを駆使してデブリの方角情報を用いる相対航法(AON※4 )を開始しました。今後はこの方角情報も用いながら安全に接近を続け、その後は搭載センサが取得するデブリの形や姿勢などのさまざまな情報をもとに、さらに距離を詰めていきます。

ADRAS-J紹介動画: https://www.youtube.com/watch?v=FGus-3T_ihE&t=1s
ADRAS-Jミッションページ:https://astroscale.com/ja/missions/adras-j/
ADRAS-Jプレスキット:https://astroscale.com/wp-content/uploads/2024/02/240214_ADRAS-J_Press_Kit_JP_Preview.pdf

※1 非協力物体:接近や捕獲・ドッキング等を実施されるための能力・機器を有さない物体のこと
※2 RPO:Rendezvous and Proximity Operations Technologiesの略称。ランデブ・近傍運用
※3 過去に同様のミッションが実施されたか否かを自社で調査(2023年)
※4 AON:Angles-Only Navigationの略称。デブリの方角情報を用いる相対航法



アストロスケールは、大型デブリ除去等の技術実証を目指す宇宙航空研究開発機構(JAXA)の商業デブリ除去実証フェーズIの契約相手方として選定、契約を受けて、ADRAS-Jを開発しました。商業デブリ除去実証は、深刻化するデブリ問題を改善するデブリ除去技術の獲得と、日本企業の商業的活躍の後押しの二つを目的とする JAXAの新しい取り組みです。この枠組みに基づき、本事業はJAXAから技術アドバイス・試験設備供用・研究成果知財提供を受けて実施されています。
商業デブリ除去実証ウェブサイト:https://www.kenkai.jaxa.jp/crd2/project/



アストロスケールは、宇宙機の安全航行の確保を目指し、次世代へ持続可能な軌道を継承するため、全軌道における軌道上サービスに専業で取り組む民間企業です。 2013年の創業以来、軌道上で増加し続けるデブリの低減・除去策として、衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去、既存デブリの除去、寿命延長、故障機や物体の観測・点検など軌道上サービスの実現を目指し技術開発を進めてきました。また、長期に渡り安全で持続可能な宇宙環境を目指す為、技術開発に加え、ビジネスモデルの確立、複数の民間企業や団体、行政機関と協働し、宇宙政策やベストプラクティスの策定に努めています。本社・R&D拠点の日本をはじめ、英国、米国、イスラエル、フランスとグローバルに事業を展開しています。
アストロスケールウェブサイト:https://astroscale.com/ja/



SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とありますが、そもそも具体的にはどういったことなのでしょうか?

国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及び イノベーションの推進を図る
9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030 年までに各国の状況に応じて雇用及び GDP に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同 割合を倍増させる。
9.3 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融 サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。
9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プ ロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。 すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
9.5 2030 年までにイノベーションを促進させることや 100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじ めとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上さ せる。
9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テ クノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジ リエント)なインフラ開発を促進する。
9.b 産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開 発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。
9.c 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020 年までに普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。