再生材マーケットプレイスシステム
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日立と積水化学が、再生材の活用促進を支援する「再生材マーケットプレイスシステム」を用いた実証を完了

株式会社日立ハイテク、株式会社日立製作所、積水化学工業株式会社は、リサイクルプラスチックをはじめとした再生材の活用促進を支援する「再生材マーケットプレイスシステム」のプロトタイプ版を用いた実証実験を完了しました。

株式会社日立ハイテク(以下、日立ハイテク)、株式会社日立製作所(以下、日立)、積水化学工業株式会社(以下、積水化学)は、リサイクルプラスチックをはじめとした再生材の活用促進を支援する「再生材マーケットプレイスシステム」のプロトタイプ版を用いた実証実験で本システムの有用性を確認し、事業化に向けて取り組みを推進しています。

本システムは、再生材を原材料として購入したい買い手と、廃材を再生材として循環させたい売り手をつなぐマッチングや、一連の取引プロセスをオンライン上に実現するサービスを提供する仕組みです。日立ハイテクが長年培ってきたプラスチック材料に関する知見やコア技術である計測・分析技術と、日立のマテリアルズ・インフォマティクス(以下、MI)や生成AIなどの先進デジタル技術を用いて、日立ハイテクと日立が連携し独自に開発しているものです。積水化学は、自社の製造工程で発生した廃材を本実証において提供するとともに、ユーザー視点で要望や改善点などを提案し、本システムの開発に大きく貢献しています。

本実証では、本システムのプロトタイプ版を活用し、廃材から加工された再生材が、買い手である製品メーカーの原材料として採用できるかを検討する一連のプロセスが、滞りなく成立することを検証しました。この成果をもとに、本システムを活用した再生材の活用促進につながるサービスの2025年度事業化をめざして、今後も3社一体での資源循環に向けた取り組みを加速し、サーキュラーエコノミーおよび持続可能な社会の実現に貢献しています。



気候変動、生物多様性の損失、廃棄物の増加、資源不足といった社会課題への対応の一つとして、昨今、サーキュラーエコノミーが注目されています。このような背景の中、製品メーカーや素材メーカーにおいては、再生材の活用や製造工程で発生する廃材の再資源化に対するニーズが高まっています。しかしながら、廃材由来の再生材はバージン材*1 に比べて品質が安定せず、物量が変動しやすいため、取り扱いには専門知識や多くの手間が必要です。そのため、再生材の買い手と売り手のマッチングが難しいという課題があります。例えば、買い手にとっては、リサイクラー*2 の探索・選定や不純物混入のリスクがある再生材の品質を確認するための情報が必要ですが、情報を集めにくいというのが現状の課題です。また、売り手にとっても、買い手を見つけられないため再生材として活用できず、最終的には廃棄してしまうケースが見られます。

*1 バージン材:新品の素材のみを用いて製造したもの
*2 リサイクラー:工場や一般家庭などで出る廃棄物を、再度プラスチック製品や化学製品などの原料として活用できる状態に加工する役割を担う企業



これらの課題解決に向け、日立ハイテクと日立が連携して再生材の活用促進を支援する本システムの開発に取り組んでいます。日立ハイテクは、長年専門商社として培ってきた材料に関する幅広い知見やネットワーク、コア技術を用いた計測・分析の装置・サービスを生かし、材料に関するデータだけでなく、適切な再生材形成プロセスの条件の提案、再生材の品質管理など、再生材活用の課題解決に貢献するノウハウを本システムに提供します。日立は、AIなど先進デジタル技術を活用し、50社100事例を超える素材メーカーなどへのMIソリューションの提供を通して培った知見・ノウハウを用いて本システムを開発します。また、本システムをさらに充実させるために、従来からMI推進に向けて協創を進める*3積水化学とともに本実証に取り組みました。
積水化学グループでは、「2050年にサーキュラーエコノミー実現」を掲げ、持続可能な社会をめざしています。生産工程において発生した端材などを原料に戻して再利用する内部リサイクル、廃棄物として処理する際にはエネルギーを含む再生原料として活用するなど、これまでさまざまな取り組みを進めてきました。今後さらなる再資源化率向上をめざし、本実証においては、自社の製造工程で発生した廃材を提供し、再生材の買い手およびリサイクラー、廃材の回収会社など本システムに関わる買い手・売り手の双方の立場として、有用性の検証に大きな役割を担っています。
本実証では、積水化学の廃材を再生材に加工後、再生材の品質や性能を日立ハイテクの分析装置などを用いて評価しました。その後、日立にて再生材の品質および性能データを本システム上にアップロードし、このデータをもとに買い手(製品メーカー)が自社製品の材料として採用できるかを検討する、といった一連のプロセスが滞りなく成立することを検証し、本システムの有用性の確認および実証完了となりました。

*3 ニュースリリース(2022年9月20日) https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2022/09/0920.html



本システムユーザー間(買い手・売り手)での再生材循環を支援するさまざまなサービスの提供に向け、開発を進めています。主に以下のマッチング支援機能と品質管理により、再生材の安全安心な取引を実現します。
(1) 再生材を使いこなす知見と生成AIを活用した初心者向けマッチング支援機能

日立が持つ再生材を使いこなす知見や生成AIを用いて、質疑対応形式でユーザーが求める仕様や用途を明確化し、使いこなすための情報も含めて再生材をレコメンドすることで、実用的なマッチングを支援します(特許出願中)。これにより、例えば再生材の活用実績がない調達・製造部門などにおいても、容易にマッチングが可能になります。

(2) MIソリューションを活用したプロフェッショナル向けマッチング支援機能

これまで日立が独自に収集してきたリサイクルプラスチックの材料組成・性能の実測データや、Lumada*4の「材料開発ソリューション」を提供する中で培った知見を活用し、ユーザーが理想とする材料性能に応じた再生材のカスタム設計を支援します(特許出願中)。また、再生材の開発前に実現可能性も検証できるため、前例がない場合も実用的なマッチングが可能です。さらに、再生材に添加物を混ぜた場合の物性や、バージン材をある比率で混ぜた場合の特性の予測なども可能なため、研究開発部門などの効率的な開発に貢献します。


*4 Lumada :お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューショ ン・サービス・テクノロジーの総称
https://www.hitachi.co.jp/products/it/lumada/

(3) センシング・計測・分析技術による再生材の成形サポートや品質管理

再生材の成形にあたっては、材料の配合や成形方法などの知見が不足しており、その検討や試作に多くの時間を要していました。日立ハイテクおよび日立が持つセンシング技術によって、再生材の品質から特徴量*5を抽出することで最適条件の提案をサポートし、導入のハードル低減に貢献します。また、日立ハイテクグループの分析装置を用いて、規制対象となる化学物質や再生材の性能に影響を与える異物など、再生材の品質確認をサポートするサービスも提供します。


*5 特徴量:分析対象となるデータや対象物の特徴・特性などを定量的に表した数値



日立ハイテクと日立は、本実証の結果をふまえ、よりお客さまに活用いただきやすい環境の整備に向け、積水化学をはじめとする素材メーカーなどさまざまなステークホルダーと連携し、本システムを活用したサービスの2025年度中の事業化をめざしてOne Hitachiで挑戦していきます。日立ハイテクはサービスの事業化後、販売元として幅広い販売網を生かして国内・海外の製品メーカーや素材メーカー向けに展開するため、本事業へ参画くださる企業(買い手・売り手)を募集していきます。日立は、事業化に向けたシステム開発を日立ハイテクや積水化学と連携し推進していきます。積水化学は、引き続き日立ハイテク・日立と連携し、2050年サーキュラーエコノミーの実現に向けた積極的な取り組みを推進していきます。



 ・日立ハイテクの「材料開発ソリューション」について
  https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/products/ict-solution/randd/mi/solution.html
 ・日立の「材料開発ソリューション」について
  https://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/app/mi/
 ・積水化学のサーキュラーエコノミー実現に向けた取り組みについて
  https://www.sekisui.co.jp/sustainability_report/eco/initiatives/effective_use/



SDGs目標12「つくる責任つかう責任」とありますが、そもそも具体的にはどういったことなのでしょうか?

国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する
12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる。
12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフ スタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境 への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。