バヌアツの子供達
PROSPERITY

現地視察で見えた、支援を必要とするバヌアツ共和国の現状とワクチン支援で守りたい、子どもたちの笑顔と人々の素朴な生活

JCVはバヌアツを訪問し、首都ポートビラがあるエファテ島とその近隣にあるレレパ島で現地視察を実施しました。

オーストラリアの東側、南太平洋に浮かぶ島国バヌアツ共和国。「認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会」では、2010年からバヌアツを支援国として、はしかや破傷風などの感染症を予防するワクチンや関連機器を届けています。
2024年10月5日(土)~10月12日(土)、JCVはバヌアツを訪問し、首都ポートビラがあるエファテ島とその近隣にあるレレパ島で現地視察を実施しました。この視察で訪ねた村で、自給自足で生活する子ども達の暮らしや、未だ電気も通わない小さな島で子ども達の命を守る看護師夫婦の奮闘からあらためてわかる、支援を必要とするバヌアツの現状について詳しくお伝えします。
(視察報告書はこちら:https://www.jcv-jp.org/contact/pamphlet



南太平洋に浮かぶ島国バヌアツは、国全体が83もの小さな島の集まりで、大きな都市は3つのみ。人口の75%が田舎に暮らしているため子どもへのアクセスが困難で、離島で診療所や医療スタッフを確保するための費用負担も大きくなっています。また、広い地域をカバーするためには、それだけで多くの医療スタッフを確保する必要がありますが、国内に医療の教育機関はなく、人材育成と確保も大きな課題となっています。そこに気候変動によるサイクロン被害増加への対策、先進国の太平洋地域での覇権争いによる国内政治の不安、国外での出稼ぎがしやすくなったことによる働き手不足、といった問題も加わっている中で、今年は国内最大の航空会社バヌアツ航空の運行停止なども重なり、国民は常に多くの課題を抱えながら、不安定な暮らしを強いられています。

村や離島に住むバヌアツの人々は、未だ多くが自給自足の生活を営んでいます。私たちが訪れた、エファテ島西部の海沿いにあるマンガリリュー村もその1つです。みんなで力を合わせ、畑で野菜などを栽培し暮らしています。私たちも畑での収穫から2時間掛けて、伝統料理「シンボーロ」の調理をお手伝いしましたが、それだけでも重労働です。また、子ども達も、10m近くはあるヤシの木に登ってココナッツを収穫するなど、できることを手伝っていました。しかし、都市からこの村へアクセスする道路は整備も行き届いておらず、唯一ある小さな診療所には医者もなく看護師の人数も足らないため、周辺国からの人員派遣に頼るという厳しい環境で生活をしていました。

自給自足の生活が営まれているバヌアツですが、首都があるエファテ島内であれば、診療所などの施設にもしっかりと電気が通っています。しかし、島そのものに送電がされていないという場所も数多くあります。エファテ島の北西部に浮かぶレレパ島もそんな離島の1つです。電気がないため、人々は、夜、ろうそくの火や焚火を明かりに生活しています。
レレパ島の医療を一手に担うアマウリ診療所で私たちを出迎えてくれたのが、リスコさん夫妻です。
リスコさん:「診療所にも送電はないため、ワクチンを保管するための保冷庫を動かすのは、太陽光パネルによる自家発電が頼りです。また、保冷庫は四角に保冷剤を設置でき、5日程度ならワクチンの適正な保管温度を守れるようになっています。日本の皆さんからご支援いただいたワクチンを、しっかりと子ども達に接種できるように気を付けています。仕事は大変ですが、妻と協力して、これからも島の人たちのために頑張っていきます。」
私たちが訪問したのは、ちょうど赤ちゃん達のワクチン接種日。診療所には、20人ほどの親子が集まり、赤ちゃんがポリオワクチンや五価ワクチン(ヒブ、B型肝炎、破傷風、百日咳、ジフテリア)の接種を受けていました。レレバ島では、看護師の旦那さんと看護助手の奥さんのたった2人で、島民700人の命と健康を守っていました。

現地UNICEF事務所や保健省によれば、バヌアツは離島が多く、医療へのアクセスが困難な特性上、ワクチンを接種して感染症を予防することがとても大切にされているそうです。かつて、バヌアツは太平洋諸国で最もヒブ(細菌性髄膜炎)の死者が多い国でしたが、私たちが支援する五価ワクチン(ヒブ、ジフテリア、百日咳、破傷風、B型肝炎をまとめて予防可能)の接種が進んだことで、近年、死者数は減少してきています。
しかし、それでも、バヌアツでは年間で約30%の子ども達が未だ十分なワクチン接種を受けられておりません。州ごとのワクチン接種率にも大きな差が生じているのが現状です。
看護師の数が足らない中、現地では数時間かけて森を歩き、村を訪問して接種を行う出張ワクチン接種も盛んに行われています。それでも、「診療所で一度に保管できるワクチンの数に限りがあり、順番待ちが必要」、「接種を行える看護師が常駐していない診療所がある」など、課題は山積しています。1人でも多くの子ども達の命を救うため、より一層の支援が必要とされています。

今回の現地視察で得た情報を踏まえ、同法人では2024年のバヌアツへの子どもワクチン支援の内容を決定ました(総額28,769,800円分)。UNICEFや現地医療従事者と連携し、以下のワクチンを途上国の子ども達に届けます。また、各地の診療所に勤める看護師のトレーニングを実施することで、現地の医療環境の改善にも取り組んでいます。

ワクチン支援内容
五価ワクチン(ヒブ、ジフテリア、百日咳、破傷風、B型肝炎):28,000人分
MMRワクチン(はしか、おたふく風邪、風疹):22,500人分
不活化ポリオワクチン:11,500人分

ワクチン以外の支援
診療所へのワクチン輸送費用
看護師のトレーニング、プログラム管理費用



団体名:認定 NPO 法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会
代表:理事長 剱持 睦子 (ケンモチ ムツコ)
創設者:会長 細川 佳代子 (ホソカワ カヨコ、細川護煕元首相夫人)
本社所在地:東京都港区三田 4-1-9 三田ヒルサイドビル8F
URL:www.jcv-jp.org
設立:1994 年 1月29日
スペシャルサポーター:
竹下景子(ワクチン大使・女優)、和田毅(プロ野球選手)、早見優(歌手・女優)、三國清三(シェフ・株式会社ソシエテミクニ 代表取締役)、進藤奈邦子(WHO 健康危機管理プログラムシニアアドバイザー)、鏡リュウジ(翻訳家・心理占星術研究家)、安藤優子(ジャーナリスト)、キャップ革命 ボトルマン(株式会社タカラトミー)



外務省 SDGsサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標10 国内および各国間の不平等を減らす
10.1 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成⻑率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
10.4 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
10.5 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
10.6 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
10.7 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
10.a 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
10.b 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
10.c 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。