夏休み 子どもの食を守る支援プロジェクト
PEOPLE

物価高騰×給食なし――二重苦の夏休み 低所得のひとり親家庭で、子どもの食事”減”の危機 『夏休み 子どもの食を守る支援プロジェクト』始動

”お米・栄養バランス・すぐ食・季節感” 4つのアプローチで、支援を必要とするすべての家庭の食卓に安心を

認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(本部:東京都大田区、代表理事:小泉 智)は2017年より日本国内の子どもの貧困対策事業として、低所得のひとり親家庭を対象としたフードバンク「グッドごはん」を運営し、食品支援を行っています。
学校給食がなくなる夏休み期間は、家庭での食費負担が増えるなど出費がかさむ傾向があり、経済的に厳しい状況にあるひとり親家庭では生活のさらなる困窮が懸念されます。グッドネーバーズ・ジャパンが「グッドごはん」を利用する家庭へ行った調査では、学校の長期休み中、1日2食以下となる子どもの割合が増加する実態も明らかとなりました。加えて、昨今はお米をはじめとする食品価格の高騰が続いており、暮らしの厳しさに拍車をかけています。
こうした状況を受け、「グッドごはん」では、低所得のひとり親家庭へ向け『夏休み 子どもの食を守る支援プロジェクト』を実施します。当プロジェクトでは”お米・栄養バランス・すぐ食・季節感”の4つの柱を掲げ、学校給食のない期間に特に必要とされる食品を、すべての対象家庭へ無償で配付します。



「子供が親に気を使って食べる量を減らす」  食事回数・量が減る子どもが増加、栄養面の心配も

同社が2025年6月に「グッドごはん」を利用するひとり親家庭へ行った調査 [1](約2,000名が回答)より、子どもの学校の長期休み中、低所得のひとり親家庭が下記のとおり深刻な食の困難を抱える実態が見えてきました。

・子どもの食事回数の減少
長期休み中、「1日2食以下」の子どもが約2.5倍に増加

・子どもの食事の栄養バランス悪化
回答者の約9割 「長期休み中、子どもの食事の栄養バランスが悪くなる」

・経済的・時間的貧困の影響
長期休み中の子どもの食事回数・栄養バランス悪化は「経済的理由」約4割、「時間的理由」約3割

グッドごはん利用者からは、切迫した状況を示す声が多く寄せられています。
「給食がないので食費に余裕がなくなり生活が逼迫します。そのため、食事の回数や量を減らさざるをえません。体力をつけなければならない夏に痩せるのは辛いです。」
「学校で食べられる魚、野菜などが減ってしまいます。長期休みは生活リズムの乱れもありますが、子供も気を使って食べる量を減らしているように思います。」

お米の価格が高騰、さらなる打撃「次にどのくらいの量を購入できるか見通しが立たない」

お米の小売価格が以前の2倍ほどになったことで、多くのグッドごはん利用家庭の食卓が影響を受けています。先述の調査では、お米の価格高騰を受け、この夏は「米以外の主食で代用する」「自分が食べる米の量が減る」と予想する回答者が多数見られました(複数回答)。

回答者の声からは、深刻な状況がうかがえます。
「私がお米を食べるのは、子どもが食べた後に余った時だけ。 お粥や雑炊にしてかさましをしています。これ以上お米の値段が上がったら、本当に困ります」
「次にどのくらいの量を購入できるか見通しが立たず、炊く量を減らしています。子どもたちは遠慮しているのか「そんなに食べなくても大丈夫だよ」と言うようになりました」

[1]「子どもの学校の長期休み期間中におけるひとり親家庭の暮らしの状況に関するアンケート」
・実施日程:2025年6月3日~6月11日
・対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者のうち、学校給食を普段から食べている子どもがいる保護者 ※利用者は、原則としてひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
・有効回答者数:2,105名



上記に挙げた調査結果を受け、同社は物価高騰と給食のない長期休みが重なるこの夏、『夏休み 子どもの食を守る支援プロジェクト』を実施し、ひとり親家庭の食卓を支えたいと考えています。
当プロジェクトでは、支援の軸として4つの柱を掲げます。

【 お米 】 対象全世帯にお米2kgを配付
価格高騰の影響で調達が難しくなっているお米を、すべての対象家庭に必ずお渡しします。「グッドごはん」では、1家庭あたり2kgのお米を全家庭へ配付するため、月に12トン近くのお米が必要となります。子どもの成長に欠かせない主食を安定的に届けることは、今夏の最重要課題です。

【 栄養バランス 】 給食のない期間の栄養をサポート
給食のない夏休み、十分な栄養がとれない恐れのある子どもや保護者を支えるため、家庭での購入が経済的に難しい肉類や野菜等、栄養面を考慮した食品を配付します。

【 すぐ食 】 忙しさをサポートするレトルト食品も
「グッドごはん」を利用するひとり親家庭の保護者は時給制で働いている場合も多く、仕事に時間を費やさざるを得ない中、子どもの長期休み中に十分な食事を用意したくても、そのための時間を確保できないケースが少なくありません。そこで、温めるだけですぐに食べられるレトルト食品等も、できる限り配付内容に含められるよう努めます。

【 季節感 】 家族団らんと季節感を意識した配付内容
ただ空腹を満たすだけでなく、家族で食卓を囲むきっかけとなるような、夏の旬の野菜や果物を入れた配付セットを計画しています。



フードバンク「グッドごはん」では、来る夏休みに向け、食品支援の利用希望世帯が増加すると見込んでいます。2025年6月の「グッドごはん」での食品配付世帯数は、前年同月比7割増・過去最多の5,654世帯に達しましたが、家計が一層逼迫する7月から8月の夏休み期間には、支援を必要とする家庭がさらに増える可能性があります。
こうした想定に伴い、支援対象家庭へ配付する食品の確保が急務である一方、物価上昇の影響や、企業による食品ロス削減の推進なども相まって、今般では全国各地のフードバンクで食品寄付が減少している状況がみられます。「グッドごはん」においても、同様の課題に直面しています [2]。

[2] 認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンのプレスリリース「【食のセーフティーネットに試練】食品支援利用世帯が過去最多も、配付食品の確保追いつかず――フードバンクの現場から」より

ーーー

■団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO法人」として東京都から認可を受けています。
https://www.gnjp.org/

■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を毎月無料で配付する事業です。2017年9月の事業開始以降、延べ13万を超える世帯に食品をお渡ししてきました*。
首都圏、近畿および九州における約40か所*の配付拠点にて、企業や個人の寄付によって集まったお米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品をひとり親家庭に配付しています。
*2025年5月時点(配付拠点数は月により変動)
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています
※生活保護受給中の方は対象外です



外務省 SDGsサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標 2. 飢餓に終止符を打ち、食糧の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層および幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食糧を十分得られるようにする。
2.2 5歳未満の子どもの発育障害や衰弱について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養失調を撲滅し、若年女子、妊婦・授乳婦、および高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
2.3 2030年までに、土地その他の生産資源、投入財、知識、金融サービス、市場、および付加価値や非農業雇用の機会への平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民族、小規模な家族経営の農家、牧畜家および漁師をはじめとする、小規模食糧生産者の農業生産性および所得を倍増させる。
2.4 2030年までに、持続可能な食糧生産システムを確保し、生産性および生産の向上につながるレジリエントな農業を実践することにより、生態系の保全、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水その他の災害への適応能力向上、および土地と土壌の質の漸進的改良を促す。
2.5 2020年までに、国内、地域、および国際レベルで適正に管理および多様化された種子・植物バンクなどを通じて、種子、栽培植物、飼育動物・家畜、およびその近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づく遺伝資源および伝統的な関連知識の活用による便益へのアクセスおよび公正かつ公平な共有を推進する。
2.a 国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発、および植物・家畜遺伝子バンクへの投資を拡大し、開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産の強化を図る。
2.b ドーハ開発ラウンドの決議に従い、あらゆる形態の農産物輸出補助金および同一の効果を伴うすべての輸出措置の並行的廃止など、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正および防止する。
2.c 農産物商品市場およびデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食糧備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にすることにより、食糧価格の極端な変動に歯止めをかける。