視覚障がい者の高校生たちによる、クッキング部が誕生。『音でみるクッキング部 SOUNDFUL COOKING CLUB』10月29日より始動 味の素(株)がサポート
視覚に頼らず「音」を手がかりにした調理法体験。筑波大学附属視覚特別支援学校から始動し全国への拡大も見込む
味の素株式会社(社長:中村 茂雄/本社:東京都中央区)は、筑波大学附属視覚特別支援学校と協働し、同校の寄宿舎において史上初のクッキング部「音でみるクッキング部 SOUNDFUL COOKING CLUB(サウンドフル クッキングクラブ)」を2025年10月29日(水)より始動します。本取り組みは、視覚障がいのある生徒が「音」を手がかりに料理を楽しむ力を育み、自立や自己表現につなげる機会を創出することを目的としています。本活動は、同社が2025年2月に公開した音声特化型レシピサイト「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」での知見を発展させたものであり、視覚障がい者と晴眼者双方にとって“音で料理を楽しむ”新しい文化を育てるための第一歩を目指しています。
音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE サイトURL: https://www.ajinomoto.co.jp/event/otodemirurecipe/
「音でみるクッキング部 SOUNDFUL COOKING CLUB」とは、味の素が公開中の、主に視覚障がい者の方々に向けたレシピコンテンツ「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」から生まれた活動で、視覚情報に頼らず、食材が焼ける音や煮立つ音、振動や香りなど多様な感覚を手がかりに調理法を学び合う場です。
まずは、筑波大学附属視覚特別支援学校の高校生たちによるクッキング部が始動。音を合図に調理を進める新しい体験が始まります。
今後は盲学校を含めた全国の学校や地域にも、この活動を広げていきます。
私たちの暮らしにとって、料理は欠かせない営みであり、同時に自立へとつながる大切な一歩でもあります。しかし従来のレシピは、次のような“視覚情報”に大きく依存してきました。
・「きつね色」「飴色」「焦げ目」などの色や見た目による表現
・食材の断面写真や仕上がり写真、動画などのビジュアル情報
・盛り付けの見た目を前提とした説明
これらの表現は、視覚障がいのある人にとっては判断しづらく、料理を学ぶ上でのハードルとなっていました。そこで私たちは、これまで“目で判断する”ことが当たり前だった料理の表現を、「音」やその他の感覚に置き換えて学ぶ場づくりに取り組みました。肉が焼けるときの“ジュッ”という音や、煮物が煮立つ“ぐつぐつ”という音。そうした「音の手がかり」を活かすことで、生徒の皆さんが料理をより身近に、そして楽しく感じられるようにしたい。さらに料理を通して、自信を積み重ね、自らの手で生活を切り開いていく力を育んでほしい。この願いこそが、クッキング部設立の原動力となりました。
クッキング部には、「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」の開発にも携わった料理大好きな全盲のみきさんと、プロの料理人として活動する東山広樹さんを特別アドバイザーとして迎えました。過去にトライアルで行ったプログラムでは、生徒たちが二人の指導を受けながら、油が弾ける音、肉が焼けるときの香りや振動といった「音や感覚を手がかりにした調理法」を実践。 餃子が焼き上がったときの「底を触ったときに伝わるカリカリ音」や、豚肉に焦げ目がついたときの「サラサラとした音がシューシューに変わる瞬間」など、料理の仕上がりを耳や香り、手で感じ取りながら調理に挑戦。普段から家庭科の授業を通じて料理経験はある生徒たちですが、ガスコンロや包丁を使って本格的な料理に挑戦するのは、誰にとっても緊張感のあるチャレンジです。そんな中でも生徒たちは、お互いに声を掛け合い助け合いながら、驚くほど早くコツをつかみ、餃子やトンテキを見事に完成させました。
筑波大学附属視覚特別支援学校参加生徒
「料理の最中に聞こえるさまざまな音や、漂う香りなど、これまで意識していなかったことを感じ取ることができ、とても新鮮な体験でした。火の通り具合を音で判断するというのは驚きでしたが、油がはじける音や鍋がぐつぐつと鳴る音を目安にできることを知り、楽しく、そして少し自信もつきました。今回学んだことを生かして、自分でも料理に挑戦してみたいです。」(高校2年生)
「料理の体験を通して、音や匂いといった五感で変化を感じ取ることの大切さを学びました。火の通り具合を“音”で確かめるという新しい方法を知り、料理をすることが好きになりました。これからは、食材から美味しい瞬間を教えてくれる音を大切にしたいと思います。」(高校2年生)
料理大好きな全盲のみきさん(特別アドバイザー)
「料理は私にとって暮らしに彩りを添えてくれる大切な楽しみです。
油のはねる音や煮立つリズム、香りの変化を感じながら、十分にその魅力を味わうことができます。今回、生徒の皆さんと音を起点に一緒に料理をしました。食材に熱が加わるにつれて、様々に変化する音の豊かさに、思わずわーっと感動の声が上がり、私も嬉しくなりました。「音って、こんなにわかりやすいんだ」「難しいと思っていたけど、感覚を頼りにするとこんなにも美味しくできるんだ」と率直に感じたことをいきいきと伝えてくれました。お料理は誰でも自由に楽しめるもの。感覚を通して食材と仲良くなると奥深い発見があり、ワクワクと心躍ります。この活動を通して料理の楽しさを多くの人と分かち合えると嬉しいです。」
料理人・東山広樹さん(特別アドバイザー)
「今回、講師として【教える】立場で参りましたが、生徒の皆さまに【教わる】ことの方が大きかったと、強く感じました。例えば、餃子。完成の焼色を『焼き目の色』という視覚情報以外で判断するために、焼き面をお箸でなでて『ザッ、ザッ…!』という音がするかどうか、を頼りにしました。その音を頑張って聴こうとする生徒さんの真剣さが凄まじく、自分が料理の各工程にここまで神経を注げているか?と、料理への向き合い方を改めて考えさせられました。生徒の皆さんが一生懸命料理を取り組む姿勢に胸打たれ、純粋に『何か役に立ちたい』と心の底から、強く、思いました。そして、僕が得意な料理によって皆さんの役に立てることが、本当に嬉しいです。『料理を続けてきてよかった』と心から思えました。これからも皆さんのお役に立てるよう、一生懸命、最大限尽力致します!」
佐伯登さん(筑波大学附属視覚特別支援学校 寄宿舎指導員)
「これまでも寄宿舎の調理実習では、一緒に料理をし、生徒にとって身につくように教えてきました。どうしても指導員が教える立場になると、“視覚に頼る表現や言葉”が中心になりがちでした。今回のクッキング部では、積極的に“音”にフォーカスしたことで、生徒が自分の感覚を頼りに調理を進める姿が見られました。その姿はとてもいきいきとしていて、自信を持って取り組む様子に、私たちも思わず笑顔になりました。優しく見守りながら、生徒と一緒に新しい発見を分かち合えた、とても良い機会になりました。」
味の素(株) 担当者コメント
「料理の楽しさを、誰もがアクセスできるものにしたい。そう考え、視覚に依存しない“音”中心のレシピづくりを模索してきました。今回、筑波大学附属視覚特別支援学校の皆さんと共に、SOUNDFUL COOKING CLUBという実践の場を設けることができたことを嬉しく思います。今後も、全国の盲学校や、晴眼者の学校にも広がっていくことを目指しています。」
みきさん プロフィール
広島県生まれ。フェリス女学院大学音楽学部声楽学科を主席で卒業。透明感のある歌声と表現豊かな歌唱に定評があり、年に数回のコンサートを行っている。2005年から2025年9月まで「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」でアテンドを務めた。‟みきティ”の愛称で親しまれ、底抜けに明るいキャラクターで多くのファンを集めた。現在は、聴覚、嗅覚、触覚などの優れた感性を活かし、商品開発やサービス作りに携わっている。また、飲食店を経営していた両親のもとで育ち、幼い頃から食の豊かさ楽しさに触れ、料理することの探究心を育む。視覚を失ってからも持ち前の好奇心と柔軟な視点でさらに料理の奥深さを発見し、日々キッチンに立つ時間を楽しんでいる。
東⼭ 広樹さん プロフィール
株式会社マジでうまい 代表取締役
餃子定食専門店「餃子の肉太郎」店主。汁なし担々麺専⾨店「タンタンタイガー」の創業者。現在は、会員制レストランを主宰、飲⾷業のレシピ開発などを⾏っている。年間400軒超の飲⾷店を⾷べ歩きし、料理のおいしさについてとことん追求。⽇本⼀マニアックな料理ブログ「Cooking Maniac」も運営している。X(@h_gashiyama)のフォロワー数は7.5万⼈超(2025年10⽉現在)。
国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。
目標 3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
| 3.1 | 2030 年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生 10 万人当たり 70 人未満に削減する。 |
|---|---|
| 3.2 | すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。 |
| 3.3 | 2030 年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。 |
| 3.4 | 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。 |
| 3.5 | 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。 |
| 3.6 | 2020 年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。 |
| 3.7 | 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。 |
| 3.8 | すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 |
| 3.9 | 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。 |
| 3.a | すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。 |
| 3.b | 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。 |
| 3.c | 開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。 |
| 3.d | すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。 |